おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

4月5日 うちで遊ぼう  (第1247回)

前置きが長いのが欠点ですが直せません。三十代後半、望んでもいなかったのにアメリカの駐在員になり、5年近くカリフォルニア州の日本企業の支店で働きました。いろんな意味で、よい経験だった。その一つに、日本に住み続けていなかったら気づかなかったであろう、日本と米国のそれぞれの特徴や文化風習の違いなどを日々実感できたことです。

5年程度でアメリカが良く分かったとは申しませんが、日本に詳しくなったのは間違いない。それ以降、「外から見た日本」というのは重要な観点、情報だと思いながら、今もう海外とは縁のない仕事をしているけれども、関心を持ち続けています。


このブログで、欧米の報道機関や大使館の記事を貼っているのも、無理している訳でもなく気取っている訳でもなく、日々、のぞいているので気づいていたことを例に挙げています。そして、近ごろ海外から見た日本は、決してCOVIC-19 の対応が優れているとはいえない国であるはずです。

国内外を問わず主な論調は、以前から今なお続いていますが、一つは緊急事態宣言など政治的な決断が遅いという指摘、もう一つはPCRの検査が外国比あまりに少ないというのも、よく見かけます。

いずれも下手をすると日本だけが、このあと遅れて爆発的な流行を招き、収まりかけている諸外国に再びウイルスをばらまくのではないかという彼らの不安もあるように想像します。みんなそろって疑心暗鬼になるのも無理がない事態です。


こういう印象なり経緯なりが広まり、諸外国から見て日本政府は頼りないと思われるのが怖い。これから何が起きるのか分かりません。いきなり戦争とはならないことを祈りますが、でも軍事外交や貿易の混乱は避けられないと覚悟はしておく必要がある。先回も書いたように、食料そして地下資源を自力では到底まかなえない現代日本です。

すでに各国の移動・出入国の制限で飛行機は飛んでいないし、確か貿易の8割ぐらいの量を担っている船舶輸送も、すでに困っていることがあるそうで、すなわち船員が各地で交代のための上陸ができなかったり、人員が不足したりという、医療と似た人員態勢の危機です。


これまで本稿では、何かとこれは政府の不手際だと過ぎたことを責めていますが、前例のない悪疫対策に対し、常に科学的根拠があり万全の結果を出す方策ばかり打てるものではない。ただし、失敗や過不足があれば、糊塗・隠蔽せずに情報公開し、反省と議論を重ねてほしいものです。できてますか。

人により意見の食い違いもありましょうが、これはまともな人なら誰がどうみても駄目だというのが、今回の題材です。曲名は英語だと「Dancing on The Inside」。官房長官は、たくさんの「いいね」といただいていると評価に満足しているかのような発言をしたそうですが、まさか内心そうは思っていないと思う。


あれはそのままの形で、外から見た日本の映像的代表作になりました。私はもう長いこと同時代の音楽を聴いていないので、星野源という人は名前すら存じ上げなかったし、今なお一曲も知らない。しかし、ご本人によれば無断だったそうですが、このたびデュエットの相手に、人を得なかった。

途中で犬にまで逃げられたらしい首相が写った動画は、4月5日にインスタグラムに載ったとのこと。4月は1日にマスクの騒ぎが始まり、後の話題にする補正予算の詰めで大忙しだったはずの時期、そして4月7日に緊急事態宣言。このタイミングで、あれだ。


総理も生身の人間ですから、時には休まないと心身が持ちません。これからも必要な休息や気分転換はぜひお取りいただきたい。しかし、それをこういう形で広報するのは逆効果もいいところ。無数の人が世界中で病に苦しみ、金に困り、将来に不安を覚え、命を落としている最中に、あれだ。

わたし程度の人間でも、読めないドイツ語の公的情報を、PC一つで読めるご時世です。しかも、データ保存、拡散、印刷などなど、あらゆるルートでデジタル情報は、あらゆる人の目に触れ、半永久的に残る。お肉券やマスクのときと違い、わたくし同様、多くの人が絶句したようで、ネットの反応はむしろしばらく鈍かったような感触が残っています。


まさか、企画からIT操作まで、首相お一人で作業をこなしたとは推察し難く、ある程度の人数が関わっていたはずですが(投稿者も官邸ですし)、「さすがにこの時期これは拙い」という者が周囲に一人もおらんかったのか。最初に感染が報告された東アジアに位置する自称先進国の中枢が、この程度なのかと私が外国人なら思う。本件は手遅れです。

これまで、ここではジョンソンやクオモやメルケルといった、世界の指導者たちの言動を見てきました。時に失敗を認め、やり直していますが、とにかく人前に出て話すとき、彼らは全力で働いています。緊急時には、それが指導的立場にいる要人に不可欠の資質であることを、私たちは五感で習得しました。


個人的にはあの画像そのものよりも、添えられたセリフの冒頭箇所で天を仰ぎましたね。「飲み会もできない」。確かに、できないし、仕事と同じくキャンセル続きで、遠回しに誘ってみたこともありましたが、全て空振りで、寂しい限りです。

でも、これが当時の私たちの、特に困っていた事柄の代表格なのか。よほど「桜を見る会」が流れて辛かったのでしょうけれども、こっちは「そういう目で見られていたのか」と思うと悔しい。仕事ができないのが一番つらいのに。

何度でも申しますが、もう手遅れです。後世、日本の没落の始まりを示す象徴的な記録として、新作「美の祭典」は燦然と輝き続けることでありましょう。



(おわり)




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最近は子供が戻ってきた近所の公園にて  (2020年4月4日撮影)





 Gotta be rock 'n' roll music
 If you wanna dance with me

   ”Rock and Roll Music”  Chuck Berry

 












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