おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

マスク  (第1219回)

浦沢直樹氏が、アベノマスクのイラストを Twitter に載せて、賛否両論を呼んでいるというので、私もちょこっと覗いてきました。ずっと前に書いた覚えがあるが、今どきの漫画は、トゲトゲした描線が多く、全体に暗くて、印象がきついため好かない。

その点、手塚治虫で育った彼や私の世代は、「紙芝居の延長上」にある昔のマンガやアニメに慣れている。代表格は、残念なことに亡くなられたが、和田誠だ。あれだけ情報量が少ないのに、一目瞭然で誰を描いた絵か分かるというのは、単に似顔絵の名手ではない。雰囲気をつかまえないと無理なんだろう。”ともだち”を描いてマルオに見せたたときの春先生も、そのようなことを仰っていました。


そういう見方からすれば、相変わらず浦沢さんは古風であり、見るからに「あんな感じ」だろう。Twitter の反撃だったか、別の書き込みだったか忘れたが、「総理が可哀そう」というのがありましたな。弱いご老人をいたわるのは当然のことであり、そして私は彼を可哀そうだとは、まったく思わない。そもそも、アベノマスクという秀逸なハッシュタグの流行は、首相のマスク姿を揶揄するためのものではなく、前代未聞空前絶後の政策を期待していた多くの人たちに、一律二枚のマスクが来ることになったからだというのが私の理解です。確かに前代未聞だが。

うちに、布マスクが二枚、届いてしまったらどうしようと考えている。みんな、使うつもりなのか。日本全国、ほぼ同じ顔面になるが、それでも気持ち悪くはないか。すでに今でさえ、国会の会議場は外見だけなら隔離病棟の様相を呈している。せめて、あれで無口になれば歓迎するのだが、逆効果のごとし。少子高齢化する前の暴走族もスケバンも、しばしばマスク姿でした。どうにも、人相を隠すための小道具という固定観念を捨てきれない。なあ、サダキヨ。


近くの大きなドラッグストアでは、相変わらずトイレットペーパーとマスクの大きな陳列棚が、すっからかんのかんだ。あれだけ在庫も流通も問題ないと業界のみなさんが叫んでみえたのに、この有様です。これで予防のワクチンなんか作った日には、マンガが現実になって、殺し合いの奪い合いになりかねないぞ。すごかったんだから、オイルショックのとき。

浦沢漫画には多種多様の悪が登場するが、「20世紀少年」では国家権力そのものという必要悪が敵役です。序盤は当時の与党であり、途中から”ともだち”になるのだが、いずれも中心人物は大したことないのに、狂的な取り巻きがいるから手におえない。別にあのイラストも強烈なイデオロギーの発露でも何でもないのに、支持者の反応のほうが劇的に四月バカでカルト的になるのが、今も昔も日本人です。



(おわり)




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エイプリル・フールの桜  (2020年4月1日撮影)




 The man of a thousand voices talking perfectly loud.
 But nobody ever hears him or the sound he appears to make.
 And he never seems to notice.

     ”The Fool on the Hill”  The Beatles














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