おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

9月1日 いじめられた子供の転校  (第1200回)

 サダキヨのことだ。「20世少年」の主役格の一人。ご存じない方のため概略をお伝えすると、映画では脇役になっているが、原作の漫画では重要な役割が与えられている。

 サダキヨは、小学校5年生の夏休みに、友達と信じていたフクベエに大阪万博に一緒に行こうと騙されて、さんざん利用され裏切られ、他の子どもたちにも無視されたり軽視されたりして耐えきれず、夏休み明けの9月1日から他の小学校に転校した。


 彼は中学校に進んで以降も友達ができず、成績はそれほど悪くなかったはずなのだが、大人になってから悪い仲間に引き釣りこまれてしまい、人殺しになるまで落ちぶれる。

 それでもサダキヨの心は、良心の呵責や後悔を忘れることがなく、思いついたのは子供たちに尽くすことだった。高校の英語教師になり、そのあとで殺人ウィルスで崩壊した社会の中で、孤児たちを守る男となる。


 そんな話を思い出したのも、かつてブログかSNSで引用した覚えがある、この記事をまた読む機会があったからだ。
https://www.bbc.com/japanese/46106033

 いつかリンク切れになってしまうかもしれないので概要のみ記すと、イギリスBBC放送のサイトで、少し前の2018年11月8日にネットに載った。冒頭の一文を掲げる。「日本全国の学校で昨年度に自殺した児童・生徒は250人に上り、過去30年間で最多となったことが日本の文部科学省の調査でわかった」。


 この記事で、もう一つ衝撃的なのは、突出して9月1日が多く、山の高さで比べて見れば、次が4月の新学期、その次が正月明け。学校の長い休みが終わるときに増える。

 この図は折れ線グラフにだけ注目しないでほしい。これは積分であり、面積であり、つまり誰一人として、二度と戻ってこない。こんな記事を外国に書かれてどう思う。


 WHOからは、自殺報道を控えるよう指針が出されている。特に著名人の場合などで後追いが出るからだ。とりわけ注意が必要なのは、「手法」である。その人が悩み抜いて心身ともに消耗しつくしているときは、やり方さえ決まらないほど判断力も落ちるらしい。

 このため、かつてほどえげつない報道は確かに減った。だが、いまなおテレビでも新聞雑誌でも、模倣犯が出かねない凶悪犯罪がトップ・ニュースに並んでいるではないか。国連に叱られなければ何をしてもいいらしい。子供たちを守るのは周囲の大人の力が不可欠だが、黙っているのが得策なのか。


 それに政府はどうした。BBCは、明確にニュース・ソースを挙げている。この教育当局(内閣府文部科学省)は、もっぱら票になる学費・養育費の無償化に熱心なようで、それはそれで頑張っていただきたいが、本件はどういう手を打っているのだろうか。私の知らないところで、尽力しているのか。

 それに「理由不明」が圧倒的に多いが、これは解明されつつあるのだろうか。昔、現職の刑事さん(捜査一課の係長)に伺ったことがあるが、しっかりした遺書・書置きを残すのは、いわゆる覚悟の上(自決)の場合であって、疲れ切って消えていく人は大人だろうと、ほとんど何も残さず突然いなくなる由。


 私は教育者でもなおし、児童心理学者でもなく、今やっている仕事や資格とは何ら接点のない課題なのだが、昨日梅雨があけて、今週から8月に入るというこの時期に、前倒しで夏休みなんていう実験までやっているところがあるが、本当に大丈夫か。

 来年は東京オリンピックが開催される予定になっている。「なぜ自分ばかり」と悩んでいる子供たちに(大人にだって同じだが)、日本中が、世界中が楽しんでいる様子を見せつけたら、どういうことになるか検討したことはあるか。この夏、私は自分に何ができるか考える。


 政府与党も憲法を改正する気でいるらしいが、それより子供たちの生命や権利は保障できるのか。ファントムやオスプレイは、すぐに役立つのだろうか。最近は票田のための政治しか興味がないか。この世代間格差は、年金どころではない。

 教育現場は疲弊していると聞く。何かあると教育委員会や児相を責めるやり口も定着した。たしかに教師も、ついでにいうと医師も、よく威張るし、私もさんざん嫌な思いをさせられつつ半世紀たつが、いざというときにしろ、日常的にしろ、連中が消耗していたら、弱い者には誰が手を差し伸べるのか。



(おわり)



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 I can see you, your brown skin shining in the air.
 I see you walking real slow, smiling on everyone.
 I can tell you my love for you will be strong,
 after the boys of summer have gone.

    「夏の少年たち」  ドン・ヘンリー



































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