おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう (第1199回)

この長い名前のLPを、田舎のレコード屋で見たのは小学生のときだった。歌手の名前は知っていたけれど(何十分間も、人間なんてと歌う人だと小学校でも名が売れていた)、気軽にアルバムを買えるようなお金はないので(今も昔も)、変なタイトルだなと思っただけで通り過ぎた。

細かいことだが正確を期すと、これは「吉田拓郎」の作品ではなく、「よしだたくろう/広島フォーク村」の作品です。アルバムのタイトル名は、オープニング・ナンバー「イメージの唄」の歌詞から採られている。


このブログは娯楽一筋で千回も書いてきた。政治的、時事的なことは避けてきたのだが(そういう題材や、自分の仕事に関するものは、発表の場が別にある)、今回だけは明日の参議院選挙のことについて書きます。理由は単純で、回数・分量・中身の軽さのため、本ブログのアクセス数が一番多い。

いつもは書きたいことを書く方針なのだが、今次ばかりは読んでほしいので書く。主に若い方に、それも特に明日の選挙の投票先に悩んでいたり、投票所に行く気がない人たちに、ごく部分的でも構わないから賛成してほしい。


先日、上記の時事的・政治的なことに時々触れているほうのブログにおいて、「参院選」という記事を書いた。案の上、何の反響もなく、アクセス数も片手の指で足りるというか、数える意味もない。

constitution.hatenablog.com

そういえば、「はてなダイアリー」がつぶれて、ここ「はてなブログ」に引っ越してきた際、その移設自体に文句はないのだが、ダイアリーのほうで積み重ねてきた70万件をこえたはずのPV総数が、引き継がれていない。あれはあれで励みになるものなので、極めて残念です。


さて本題。前掲の別ブログでは、若い人に投票に行ってもらいたいと書いた。そのあとで、どこの誰だか知らない匿名のブログに、私を怒らせるようなことを書いている者がいたので反論する。そちらの趣旨は、若者は自民党の支持者が多いのだから、反自民が若手に投票を呼び掛けても逆効果だというものだ。

自民党の支持率が、若手と高齢者に多いという傾向は、各種世論調査でも一様に明確に出ている。加えて、総務省の調査によると、年代別の投票率は、若いほど低い。善かれ悪しかれ、高齢者の高齢者による高齢者のための選挙展開になっているのだ。


さて、私が気に入らないことを言っている前記のブログは、統計の上っ面を眺めただけでは正しそうにみえる。以下はその統計をどう読むかについて、当方の私見が混じるから、それが適切かどうかは各自お考え下さい。

若者の与党支持率が高く、かつ、投票率が低いということは、その数少ない若者の投票者が、かなりの割合で、自民党に投票しているはずだ。だからこそ、今回、自民党に投票してほしくないと考えている私のような人たちは、こぞって、投票所に行きそうにない若手に声を掛けているのだ。それが怖いから、右翼はああいう意見を出す。若者は馬鹿にされていると思ってほしい。


そういう私自身、若いころ(特に三十過ぎて子供が生まれたころまで)、ほとんど選挙には行かなかった。理由は大別して二つあり、一つは二十年以上、転勤族で海外にも計8年ほどいたため、ほとんど候補者の顔も名前も知らなかったという点。

もう一つは正直言って、自分の仕事や家庭がまずまず順調なら、政治なんてどうでもよかったのだ。これは運がよかったからにすぎず、若い頃は大病も失業もせず、順調に経済活動ができたら、人任せ、地元任せでいられたのです。

政治なんてどうでもよい、というのが乱暴すぎる表現であれば、ややマイルドに換言すると、自分の一票だけで世の中が変わるものでもなし、という諦めと怠慢によるものだ。たしかに自分が関わった範囲で、これまで一票差で決着した選挙なんて一回も経験していないし、数票程度の僅差さえ記憶にない。


日本に限らないと思うが、だいたい選挙において有権者も傍観者も関心を持つのは、与党になる政党が分かり切っているようなときは、どれくれい議席数をとるか(日本の場合は、何といっても大半の議決に必要な過半数)、どの政党が勝つか分からないときは、どこが首位になるか、加えれば、結果が出てからどのような連立が組まれるかだろう。

このような観点からすれば、近年、かなり確度を増しているように感じる事前調査において、いまの連立与党(自公)の過半数はかたい。私が投票してもしなくても、この予想はまず覆りはすまい。


でも、今回の選挙は特別な要因があります。言わずもがなの憲法改正というテーマで、これを次の国会でやると自民の総裁が明言しているのだから、私が有権者になって以来、最高法規たる憲法の改正が政権公約の重要事項になるのは、表向き初めてだろうという意味において、これまでで一番、重要な選挙だ。そう思うから、こうして書いても楽しくないことを土曜日の昼下がりという、一番ゆったりできそうな時間帯に書いている。

周知のように、憲法改正の定めは、憲法の第九十六条にある。まず両院の三分の二以上の議員による発議、そして、国民投票による過半数の賛成という、主な手順はこの二段階。なお、後者の国民投票は、動議された改正案を見てから、必要に応じてまた話題にします。まず、憲法の当該条項を引用します。出典は衆議院のサイト。
www.shugiin.go.jp


憲法第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


明日の選挙の最大の眼目は、上記前半の「三分の二」のほうだ。こちらは、マスコミやネットの情報発信者により若干の調査結果や観測が異なるものの、どうやら接戦らしい。その意味において、今回の投票用紙は重い。それでもゴミ箱に捨てますか。

日ごろネット右翼は、民主主義の原理は過半数だなどと無様なことを主張してみえますが、今回は改憲に限り、その過半数論はお呼びですらない。ここにおいて私は、どの政党・候補者に投票せよというような失礼なことは言わない。ただし、思い切り脅かす。寿命の残りから考えて、ひどい憲法ができ上がったとき、誰が大きな被害をこうむるのか、現時点の改憲案を今一度ご覧のうえ、できれば法律家の意見も参考にして、よく考えてほしい。



(おわり)



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房総半島のお寿司屋さんにて  (2019年7月13日撮影)



 なぜなら古い船も新しい船のように新しい海へ出る
 古い水夫は知っているのさ 新しい海の怖さを

   「イメージの唄」   よしだたくろう/広島フォーク村




































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