おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

今日から世界はドンパチ禁止  (第1032回)

 忌まわしい事件報道ばかりで、気が荒んでいる。文章もそうなる。ここは私のストレス発散の場でもあるのだ。不機嫌は伝染します。おっさんのブログなんぞ読んで嫌な気分になりなくないという方は、早期に避難願います。特に今月は酷い。

 今回のタイトルにある「世界」は、最初のころ「アメリカ」で書き出したのだが、英国で国会議員が犠牲になるという世も末の犯罪が起きたため、場所を拡げた。こういう事件は今に始まったことではないが、おそらく通信の発達と、こういうニュースが「歓迎」されるせいで、無闇やたらと届くようになった。


 1986年にロサンゼルスに赴任した当時、在留邦人の間でも恐怖の的になっていた銃による凶悪犯罪が、二つ進行中だった。犯人が逮捕されたという記憶が無い。一つは夜中にセキュリティーの甘い家に侵入し、映画やドラマでお馴染みのようにアメリカ人は夫婦で一緒に寝るのが普通だが、夫を射殺し妻を乱暴して逃げるという恐るべき粗暴犯。

 ただし、こういうのは世界中にいるだろう。もう一つには驚いた。現地報道では「フリーウェイ・シューティング」と呼ばれていた。LAのフリーウェイ(首都高みたいなもの)で、隣を走行する車のドライバーを銃で狙い撃ちにする。相手構わず。命中したら、どんなことになるか想像もしたくない。ネットも携帯も一般的ではなかった時代、日本では話題にならなかっただろう。


 私はフリーウェイの10号が好きで、市内を東西に抜けるこの道を運転しながら、LAご自慢の夜景を横目にロックを聴いていた。幸い撃たれなかった。この道は西の起点が太平洋に面するビーチ、サンタモニカで、LAの東側にあるサンバナディーノ市を通ることから、サンバナディーノ・フリーウェイという通称がついている。

 この長閑な郊外の町で、去年、銃の乱射事件があった。現場は障害者の福祉施設。昨今の殺人鬼は、日本でも同じ傾向があるが、弱い者や楽しそうな者(正確には、誰かに、そう見える者)を狙うことが多い。これは、我が国で続発している保育園の反対運動や、責める方も責められる方もセコいの一言に尽きた都知事騒動も同じ側面がありそうで、つまり他者のささやかな幸せぶりが許せない。


 このフリーウェイは長大な大陸横断道で、東の先は大西洋、終点はフロリダ州。ここで今回の事件は起きた。当所の報道では、またISの凶行とのことだったが、これを書いている現在、どうやら違うらしい。ISは犯行声明を出したそうなのだが、世の中には、やったのに認めない奴ばかりではなく、やってないのにやったと主張する変態も少なからずいるらしくて警察を困らせている。

 次に動機だと説明されたのは、同性愛憎しという、現場と被害者から想定されたものだった。ところが、容疑者は少なくとも十数回は、この店を訪れていたという証言が出てきて、また私の頭は混乱してきた。この回数では、下見ではあるまい。


 しかも、IS的な自爆と異なり、生き延びた人たちによると、日本で「乱射」と報道されている行為は最初のうちだけだったようで、そのあと一人ずつ確かめていったというから、これは単なる乱射事件ではあるまい。まるで誰かを探しているようにみえる。そのあと人質をとって立てこもったという点も、無差別自爆テロ行為の手口とは異なる。探していた誰かが見つからなかったようにも思える。

 ところが、オバマ大統領は、早々にテロリズムだと公的に発言した。ヒラリーとトランプの両候補者も、うちの首相もそう呼んでいる。だが、私の理解も当家の広辞苑の説明でも、テロリズムというのは、政治的な目的があって行われるものであり、今のところ、この犯行はテロというより、殺人事件ではないか。

 どこかの誰かのせいではなく、自分たちの社会が生み育てた者の仕業だろう。世相が暗くなっているのは、日本だけではなさそうだ。グローバリズムの世界では、いろんなものが世界中に出回るらしい。特にアメリカ文明で何かが流行ると、この国も追随するという点においては無数の実績がある。


 アメリカには合計5年近く駐在した。楽しかった思い出がたくさんあるし、仕事も英語もずいぶんと鍛えられ教えてもらい、たいていの日本人よりアメリカが好きだという自覚がある。だから、あまり悪口は言いたくないのだが、その代わり言いたいことがあると、言いたい放題になってしまう。故郷と同じだ。

 トランプ候補は、さっそく銃規制はしないと公言しているらしい。日本は核兵器の廃絶だけではなく、民間人が容易に殺人の凶器となるような銃刀を所持・販売することに対する規制の強化を、世界中に発信すべきだ。この国では撃たれる心配をする人の大半は、たぶん撃つ側にもなり得る稼業の皆さんだけだろう。長くなったので、残りはまた明日。

 ちなみに、以前「アイネクライネナハトムジーク」というクラシックの楽曲名が覚えられないと弱音を吐いたが、最近ようやく覚えた。暗いね、暗いね、アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク。第二外国語がドイツ語だったのに劣等生だったため、クライネで挫折していたのであった。小夜曲だったのか。セレナーデと言ってくれれば良かったのに。





(この稿おわり)




小魚たちの群れ、きらきらと 
(2016年6月4日 相模湾の磯辺にて撮影)





 一人で泣くと何だか自分だけ
 いけなく見えすぎる
 冗談じゃないわ 世の中
 誰もみな 同じくらい悪い
 何て暗い時代を泳ぐ雛魚のように...

   「泣きたい夜に」  中島みゆき






















































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