おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

雑記  (第954回)

 そろそろ映画の感想文をまとめて書いていこうと思う。その前にこれまで書き残した断片のようなものを一まとめに記します。先日の積み残し。「ゴールデンスランバー」で名前の分からなかった若い俳優さん。ちゃちゃっと調べられる世の中になり申した。

 キルオ役は濱田岳。どこかでお見受けしたお顔だと思っていたら、先日のネットのニュース記事に載っていた。濱田さんは軍師官兵衛を背負って逃げた栗山善助なのであった。官兵衛のほうのブログが中断したままになっている。その節はどうも、遠縁がお世話になりました。いえいえと言われそう。


 他方で、岩崎先輩の渋川清彦というオールバックの俳優さんは、やはり初めて観たようである。出番が少ないので、先輩にとって何がロックで、何がロックじゃねえのか、もう少し詳しく知りたかった。例えば、GS(グループサウンズ)はテレビによく出ていたが、ロックとは言えないのだろうか。

 大学生になったばかりのころ、ショーケンが「大阪で生まれた女」を歌った。ちょうどそのころだったと思うが、彼が雑誌の見開き2ページにわたり、内田裕也批判を展開していたのを覚えている。いわく、内田さんのせいで日本のロックが暗くなったという論旨であった。


 すでに当時、内田さんの名前は知っていたが、たぶん樹木希林の結婚相手としてではなかったかと思う。ショーケンの文章を読んだ当時も、実は今も内田裕也の代表曲が何なのか知らない。一曲も知らないのだ。当人は、あんな有名人なのに。ご本人のオフィシャル・サイトによると、青少年のころホウキ・ギターを引いていたらしい。似たようなことを誰でもしているのよね。

 むしろ映画俳優としての彼なら何作か知っている。最近では「赤目四十八滝心中未遂」で、ものすごく不愛想な彫り師の役で出て来た。迫力満点である。下っ端の若いのに赤井英和とか大森南朋とか物騒なのが控えている。また私の学生時代に、タイトルは忘れたが原発作業員の映画にも出ていた。当時は暗い映画もいっぱいあって、私の教師でもあった。


 念のため、そのときショーケン内田裕也を罵倒していたわけではなく、むしろ末っ子が長兄に歯向かって言いたい放題、言っているような感じであった。たしかにショーケンたちがいたころのGSは、派手な格好とキャッチ―な歌詞を売り物にしていて、ロック岩崎が小説で「だからテレビは信用しない」とすごい結論に達した原因となるようなバンドが多かった。

 では、ロックではないのだろうか?? どうやらケンヂは私と同様、日本語だからロック・ミュージックではないと言う程度の短絡的な区別しかしていなかったのかもしれない。大瀧詠一が亡くなったとき、「はっぴーえんど」が和製ロックバンドの草分けということで多少話題になったが、私は「風をあつめて」しか知らない。


 レコードも持っていない。大学の4年間、ほとんど毎日、FMでロックやフォークを聴いていたが、彼らの曲を聴いた覚えがない。バンド名を知ったのは多分、高校生のころYMOが登場したときだと思うのだが、私のみならず周囲で誰も「はっぴーえんど」を聴いていなかったように思う。

 大瀧さんが急逝したときの細野さんの憔悴ぶりは、見ていて気の毒であった。細野晴臣大瀧詠一の音楽性に対して「ポップス」という表現を使っていた。演っている本人たちにとって、定義なんてどうでも良いのだろう。ただし、売る方が宣伝や分類に困るのだな。買うほうも昔は試聴なんて簡単に出来なかったからねえ。


 間違いないと思うのは、はっぴーえんどやGSのメンバーたちが、英米からドサドサと入ってきた音楽を、真似したりアレンジしたりして日本語と日本人好みのメロディーに上手く融合させ、自作自演にとどまらずアイドルから演歌歌手に至るまで、無数の楽曲を提供し続けて、それを私たちはずっと聴いてきた。

 そしてどうやら主流の世代は、すっかり入れ替わってしまい、私程度では付いていけなくなってきたのだろう。以前、「ニルヴァーナ」の良さが分からなくてロックから離れたようだと書いたが、私は尾崎豊にも間に合わなかった。

 アメリカ滞在から帰国した当時、すでに彼が厳しく非難する大人たちの年齢と社会的な位置に身を置いていた以上、無理であった。先日、その尾崎の歌詞を引用したあとでネットをちょこっと見ていたら、けっこう彼の歌詞に対する嘲笑と云っても良いほどの批判が、少なからず書き込まれていたのには少々驚いた。


 まあ、ビートルズの悪口も読み切れないほどあるので、いちいち相手にするつもりもないが、私の印象では尾崎が歌った青少年たちや、彼を指示したファン層は、中学や高校を出て店や工場で働く日本の普通の若者たちだったように思う。それを見下す大人たちとの闘いが彼のロックだったように思う。

 尾崎世代に反論は無いのか。そういう物分かりの良すぎる大人になるなと彼は叫んでいなかったろうか。いつの世も文学や音楽の世界には、若い世代の代弁者やオピニオン・リーダーがいた。それゆえに古びやすいのだが、古びてもそれ故に残る。世代がめぐって、そのうち分かってくれる連中も出る。今は誰がそのような役割を担っているのか、私にさっぱり見えてこないのは近眼と老眼のせいかな。







(この稿おわり)






口直しに珊瑚礁の岩崎  (2015年7月18日撮影)







 It's been a long time since I rock and rolled.
 It's been a long time since I did the stroll.
 Let me get it back, let me get it back, let me get it back,
 baby, where I come from.
 It's been a long time, been a long time
 been a long lonely, lonely, lonely, lonely, lonely time.


        LED ZEPPELIN   ”ROCK AND ROLL”














































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