おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

もう少しサッカーのこと

 先週だったかサッカーを話題にしたのだが、辛辣なことばかり書いたため後味が良くないので、ちょいと口直しをしたくなりました。今回は昔話です。まずは10年ほど前に読んだ漫画のお話しから。行きずりの中華料理店かどこかで、置いてあった漫画雑誌を手に取った。ジャンプだったような気もする。

 適当に開いたページ、連載でも一回ごとに読み切りというのは、こういうとき読みやすい。しかも題材が前途有望な若手サッカー選手だったので興味を覚えて読んだ。まだ十代半ばのその選手は豊かな才能に恵まれながらも、成長期なのに背が伸びないという奇病を持った。しかし一目ぼれしたヨーロッパのどこかのチームが、サーカー人生ごと買い取った。彼が笑顔で船だか飛行機だかに乗るシーンで終わる。
 
 彼がその後、活躍したからこそ取り上げられたのだろうが、それにしても日本の漫画界は懐が深いね。選手の名前は覚えていないが、これはどうみてもメッシだろう。先日ネットに、当時の彼のプレーを見て採用を即断した契約責任者の回顧談が載っていて、これが奮っている。お読みになった方も多いと思う。「誰だって目の前を火星人が通り過ぎたら気付くだろうが」。


 小中学生のころは野球とサッカーの両方とも好きで、昼休みはこのどちらかを(小学校はこれらに加えてドッヂボールも)やっていたものだが、中三の時のクラスは同級生にサッカー部が何人かいたので、大雨でも降らない限り昼めし食ったら毎日サッカーをやっていたものだ。

 とはいえ22人も集まらない。せいぜい10人だ。一学年に12クラスあったから、いくら田舎の校庭が広いといっても、何百人もの在校生があちこちでキャッチ・ボールや縄跳びなんぞをやって混んでいる。昼休みってのは自由な時間だからな。この邪魔な人たちをドリブルでかわしながら、常設のサッカー・ゴールを目指す。

 一応キーパー役はいるはずなのだが、のんびりゴール前で待っているような奴は仲間にいない。また、チーム・メイトにパスをしたくても、人ごみのどこに紛れているのか分からないから、ボールを持ったら後はひたすらグラウンダーでゴールを狙うだけだ。障害物競走に近い。


 この中学時代に唯一開催されたワールド・カップが1974年の西ドイツ大会である。それまでサッカーでは点を取る者が一番偉いと信じ切っていた私(ほか、殆どの日本人)の固定観念を蹴散らしたのがスイーパーとして西ドイツを牽引したフランツ・ベッケンバウアーと、何でもやる人、オランダのヨハン・クライフである。

 両者は決勝戦で対決した。接戦だった。史上最高の準優勝チームを選べと言われたなら、この試合の敗者を私なら選ぶ。西ドイツにはベッケンバウアーのほかにもう一人、とんでもないのがいた。今やっている大会で通算得点の首位に躍り出たのが同国人のクローゼ、2位がブラジルのロナウド、3位が1974年の決勝点を挙げたゲルト・ミュラーという男。

 このゲルト・ミュラーについては、遠い昔にどこかで面白い記事を読んだ覚えがある。中盤の選手が縦パスを出すにあたり、あの辺に蹴りこめば何とかなるかと思って取りあえずロングを蹴っ飛ばすと、ボールの落下時に落下地点で何故かゲルト・ミュラーがウロウロしており、点が入る。


 ドイツといえばもう一人、キリコが鳴浜町にひょっこり戻り、サダキヨがモンちゃんの訪問を受けた2002年、懐かしの日韓大会で大活躍したゴール・キーパー、オリバー・カーンがいる。彼の面構えを見るたびにゲルマン民族の大移動とかヴァイキングなどの言葉が脳裏をよぎったものだ。

 決勝の相手はこれまで私が見てきた中でも最強のメンバーが揃ったと言えるかもしれないブラジルだった。カーンはロナウドに2点奪われたが、これまた印象に残る準優勝チームだった。やっぱり判官びいきなのかなー。バッジョのPK、ジダンの退場、敗者にも幸あれ。

 キーパーと言えば、川口能活も忘れがたい。私は彼の高校時代から見ていて(なんせ田舎が近い)、地元のサッカー好きが「川口が大人になったら、日本代表も15年は大丈夫だ」と語り合っていたのを覚えている。15年どころではなかった。前回大会でチーム・キャプテンを務めた川口のような存在が今回いたのかどうか。


 例によって好みの問題なので暴言をお許しいただきたいのだが、私はあのワールド・カップのトロフィーのデザインが余り好きではない。頭でっかちで不安定にみえるし、両手で地球なんて独裁者か”ともだち”みたいだし。地球に代えてサッカー・ボールはどうかとも考えたがハンドだな。

 あるリサーチ会社のウェブ・サイトを見ると、2002年のテレビ視聴率は1位から13位のうち12の番組がサッカーであり、例年首位争いをしている紅白歌合戦が8位になっている。プロ野球は30位の日本シリーズが最高。子供の頃には考えられなかった事態である。時は流れた。

 さて、決勝戦だが月曜日の朝4時と来たか。地球の裏側は日曜日の午後だから仕方がないな。会場は昔このブログでも話題にしました。木村とグレイシーが戦っている。ドイツも強いが、今回はアルゼンチンを応援しよう。メッシもいるし、それに日本が初めてワールド・カップで対戦した相手だ。



(この稿おわり)




昨日は台風一過で好天だったが、お暑うございました。
(2014年7月11日撮影)






こちらは東京後楽園の遊園地。
(2014年7月8日撮影)








 つまずいたら ミスしちゃったら
 とりあえず ともだちにパスでいいんじゃないかな
 元をだたせば われら ひとつ

    「サッカーボールみたいに転がって」  広瀬香美










「今の私はサッカー・ボールのように太っている」  引退後のマラドーナ




















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