おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

サダキヨの友達 (20世紀少年 第833回)

 上巻の170ページ以降しばらく、ほぼ2ページ毎に場面が切り替わる。時代も場所もバラバラであるが、テーマや人物に共通点がある。最初の2ページは大学病院のソファで肩を落として座り込んでいるカンナだ。元気がない。

 彼女が腰かけているところは、大きなドアの上に「ICU」と書かれている部屋の前だ。私が若かった頃は或る大学の通称だったが、今ではこちらの「集中治療室」のほうが良く使われているだろう。私も父が他界する前に何回か入室した。モニターとチューブに囲まれたベッドが並んでいる。サダキヨは容態が悪化して継続管理が必要となり、大部屋から移されたらしい。


 カンナは足音に気付いて、その方向に顔を向けた。目の下に隈が出来ている。寝ずの看病か。しかし来客の蝶野刑事は彼女と会うのがうれしいらしく、いつになく明るい表情で「よっ、久しぶり」と声をかけ、「探したぞ、こんなところにいたのか」と言った。受付で警察手帳を見せれば探す手間などかからないと思うのだが余り要領が良くないらしい。

 その割に手回しは良くて、ビニール袋を見せながら「ほい、タコ焼き」とお土産自慢。たこ焼きと言えば市原弁護士だが、カンナも好きだったのかな。それにしても屋外(屋台など)で売られているタコ焼き屋さんで買ったものだとしたらICUの門前で食べるのは、万が一の衛生管理上、適切ではないように思う。


 それよりカンナが反応もなく下を向いてしまったので、さすがの蝶野刑事も様子がおかしいのに気付いた。「サダキヨ」と言ってから相手の立場を思い出して「佐田先生は」と言い換え、さらにICUの標識を見上げて「よくないのか。」と事情を察したのであった。

 ようやくカンナが口を開く。「うわ言みたいに繰り返し言ってた」らしいのだ。主語は佐田先生だ。ICUに搬送される前に、サダキヨは何かを思い出したのか、あるいは死期を悟ったのか分からないが、最後のメッセージを送ろうと決意したのかもしれない。「なんて?」と蝶野刑事。カンナによると断片的な情報は次のとおり。

 1) 反陽子ばくだん
 2) かくし場所
 3) リモコン


 落語の三題噺みたいだが、蝶野刑事は訳が分からない様子である。カンナもまだ悩んでいるらしい。ここで場面が昔話に戻るのだが、もしかしたらサダキヨの記憶を漫画化したものかもしれない。すでに出てきた二人のナショナルキッドが出くわすシーンの続きであろう。

 片方が「これ、あげる」と畳んだ紙を差し出した。もう一方に何これと訊かれて、「大切なもののかくし場所」と言って立ち去ろうとする。背中で「かくし場所?」という問2を訊いて、少年はもう少し具体的に「”反陽子ばくだん”のかくし場所」と教えた。

 なぜ彼がサダキヨを選んだかについて既に私は悩み、既に答えを諦めている。彼の周囲には、他にまともな子がいなかったか...。ともあれ、このシーンでようやく当方としては、「サダキヨの友達」は誰かというチョーさんメモ以来の疑問には終止符を打てたと思う。「サダキヨの友達」とはメモの同じページのすぐ下にあった「その先の人物→」のことであり、チョーさんはこのルートを辿ったのだろう。


 再び場面が変わり、第8話「おまえは今日で死にました」という禍々しいタイトルの章に入る。ケンシロウは出てこないが。扉の頁で何者かが、ジジババの店先から宇宙特捜隊のバッヂを持ち去る。バッヂは残り一つとなったから、ここで手を出したのはケンヂ少年だ。

 次はババの登場。通行人に睨みをきかせている。店番があるから犯人探しで出歩くわけにもいかず、容疑者は通行人に絞ったか。然り、犯人は犯行現場に戻ると云う。フクベエと山根が通り過ぎる。公園からの帰りで会話も続いており、おしゃべりに夢中でババの怖い顔も眼中に無い。山根はフクベエの実験の計画を聞いて興奮している。

 詳細は不明だが、ネズミがいっぺんに何匹死ぬかなとフクベエは暗い期待に胸を膨らます。下働きの山根は、醤油工場の跡地でネズミを捕まえてくるよとともだちのご機嫌を取っている。醤油工事の跡地といえば、この翌年の夏、ヨシツネ隊長が一人で秘密基地を守り抜いた場所。ヨシツネはそこで成長したのだ。それはそうと、ネズミについては私も言いたいことがあるので次回は脱線します。



(この稿おわり)




ちょっと季節外れ。この冬は紅葉が遅かった。
(2014年元旦撮影)





冬のケヤキは潔く葉を落とす。
(2014年1月19日撮影)










































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