おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

リズム・セクション (20世紀少年 第752回)

 静岡県の生まれであるが、同県の大企業はほとんどが私の実家がある県庁所在地の静岡市ではなく、大工業都市浜松市に集中している。ヤマハもその一つで、ピアノもバイクもこの地の企業である。音楽のほうのヤマハのサイト情報によると、リズム・セクションの定義は次のとおり。

 「ジャズのビッグ・バンドなどにおける、ドラム、ベース、ギター、ピアノなどの楽器の総称。パートが4つならフォー・リズム、3つならスリー・リズムという。リズム体(リズム隊)と呼ぶこともある。ロックではドラムとベースのみを指す。」


 このブログはジャズを知らない人間が書いているので、ここではリズム・セクションとはドラムとベースということになる。さて、本日も回りくどく話を始めるが、男ならだれでもこの世にこんないい女がいるのかと感じ入った経験があるかと思う。私は二回ある。ただし、残念ながら当人と会ったわけではなく、一人は実家のテレビで、もう一人は映画館でスクリーン越しに拝見しただけだ。

 映画館のほうはイングリッド・バーグマンで、映画の名も筋も忘れたが相手役がシャルル・ボワイエだったのを覚えている。「ガス燈」かな。彼女はこれでオスカーの主演女優賞を獲った。1944年作品とある。日本と戦争しながら、こんなの作っていたのか。


 さて、もう一人は十代のころでアルバム「噂」がグラミー章を得た際のTVインタビューに出てきたフリート・ウッドマックの二人の女性ボーカルのうちの片方。スティーヴィー・ニックスという。名残惜しいが美女の話はこの辺にしておいて、フリート・ウッドマックは最初のうちイギリスで活躍したブルース・ロックのバンドであり、後にアメリカに引っ越して華やかなサウンドに模様替えして「噂」が売れた。

 ブルース時代の作品「ブラック・マジック・ウーマン」をサンタナがカバーしている。このバンドの名前は英米両時代を支え続けたリズム・セクションの二人、ベースのマクビーとドラムスのフリートウッドから取っている。

 つくづく惜しいのはキース・リチャーズのインタビュー特集の本を失くしたことだ。たぶんアメリカから帰国するときに多くの本と共に処分してしまったに違いない。このブログを書くことが分かっていたら絶対保管していたのだが、当時はパソコンさえなかったから仕方ない。その本の中で、彼がストーンズサウンドを支えているのはチャーリーとビリーだと語っていたのを覚えている。特にファンの間で、ドラムス担当チャーリー・ワッツの人気は根強い。


 バンドにもよるのだろうが、リズム・セクションは後ろのほうにいるし、ボーカルやギタリストと比べて自己主張も少ない人が多いので余り目立たないが、少人数のロック・バンドにおいては重要な役割を果たしているのだ。前にも書いたがジョン・ボーナムが急死したとき、レッド・ツェッペリンは即刻、解散した。誰がどうみてもジミー・ペイジのバンドなのに。

 1968年の夏、原っぱで秘密基地が作られていたころ、ロンドンではビートルズがホワイト・アルバムの制作に行き詰まり、特に自信を無くし人間関係に嫌気の差したリンゴ・スターは、ジョン・レノンの家に行って「辞める」と言って去った。ジョンは慌てて「辞めるな」という電報を送ってよこしたという。リズム・セクションの相棒、ポール・マッカトニーは言う。「自信がない? 凄いやつに毎日毎日、お前はすごいなんて言うか?」。


 カンナとコイズミを振り切ったチャーリーこと春波夫氏は、これからリズム・セクションの相棒だった男を訪問しようとしている。線路のガード下のやきとり屋。今の東京も探せばいくらでも、こういう店は残っている。入り口の戸を開けると、店主は客の顔を見ようともせず、「ヘイ、らっしゃい」と言っただけ。ホスピタリティー皆無。カウンターに座った客に、なんにしやしょうと鶏さんを焼きながら訊いている。注文は熱燗とナンコツという渋いものであった。

 声で分かったらしい。まずは熱燗の徳利と盃をお出ししながら、ようやく店長のビリーは客のチャーリーの顔を黙って見た。まだ和服姿のドラマーは、客がいないのに店を開けているのかと問う。客がいないのは騒動の前も後も同じだとビリーは言う。酒を一口、味わいながら客は「そう」とだけ答え、二人はしばらく黙って煙を見ている。



(この稿おわり)




アオイは梅雨入りに先駆けて咲き、梅雨開けして間もなく咲き終える。
 (2013年6月2日撮影)







 
 Yes you got your spell on me baby,
 turning my heart into stone.
 I need you so bad, magic woman.
 I can't leave you alone.

 お前に呪文をかけられて 俺の心は石に変わった
 お前が要る 悪魔の女 放っておけない


       ”Black Magic Woman"



























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