ウッドストックを取り上げているサイトはたくさんある。それらによるとクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルがウッドストックで「スージーQ]を歌ったのは1969年8月16日。ケンヂがフクベエを誘って首吊り坂にでかけた12日前のことである。この日の夜、ステージに登場したグループはGrateful Dead, Creedence Clearwater Revival, Janis Joplin with the Kozmic Blues Band, Sly & the Family Stone, The Who, Jefferson Airplane等々。
然り、60年代はロックの時代である。でもロックだけの時代でもなかった。平和の祭典と呼ばれたのはなぜか(前に書いたように「愛」はどうやら日本人が付け加えた)。この当時はベトナム戦争のど真ん中だ。イギリスの事情は知らないが、アメリカは当時、徴兵制であり、このフェスティバルに参加した男たちは演る方も聴く方も、戦場と隣り合わせの場所にいるようなものだ。CCRの歌詞は全体に重い。
アメリカは1961年に宣戦布告もせずにベトナム戦争に参戦し、1975年にサイゴンが陥落した。ビートルズのメジャー・デビューは1962年、イーグルスが「ホテル・カリフォルニア」で「あの精神は1969年以来ここにはない」と歌ったのが1976年、70年代半ばからケンヂのいう産業ロックやオッチョが聴いたAORが始まる。こういうのを私は単なる偶然とは思わない。
若い人には悪いが私は現代日本のポップスが気に入らない。演歌のほうがまだましだと思う。ときにはテレビやラジオをつけるから、逃げきれないので時々、流行の歌が耳に入って来るが、全然良いとは思わない。この件については先日、なぎら健壱がインタビューで「今の歌は冷たい」と言っていたが的確な表現だと思う。きらびやかな歌詞とIT技術を駆使したサウンド、ロックに定義はないがこんなのはロックではない。
さてと悪口もほどほどにして、カンナがかましたDJぶりを聴こう。それは「東京都民の皆さん」という地域限定の呼びかけで始まった。壁の向こうの人々は自由がきかないから仕方がないのだ。「今、流れている曲、みんな好きよね」と彼女は穏やかに前置きをした。きっと電波ジャックして武装蜂起を呼びかけていたころとは声音も違うだろう。
用件は「みんな万博会場に集まってください」と簡潔。ご招待の理由は、「フェスティバルを、音楽祭を開きます」。これにはマサオもびっくりで、そんなことで人が集まるかと怒鳴っているのだが、出会ったときは小心者だったコンチに「静かにしろ」と叱られてしまった。コンチによると「おまえもこの曲で目が覚めたんだろ」ということだ。「おまえも」と言うのだから、それまでクラシック・ロックを流していたDJコンチも目が覚めたのだろう。
たくさんの出演者が出る予定だと言った後で、カンナは「もちろん入場無料です」と約束している。なぜ「もちろん」なのか。普通に万博会場に入るだけでも金が要るだろうに。この件は後に解決する。ちなみに手元の英英辞典によりますと、「festival」とは本来、宗教儀式のこと。二義的には「音楽、舞台、映画などの催し物で、例年行われることが多い」とある。ウッドストックはかろうじて、フェスティバルと呼べないこともないという微妙な位置にあるな。
呼び方はどうでもよろしい。カンナはケンヂおじちゃんに教わった通りの表現を使うのみである。第9巻の「本気勝負」再びである。「今、流れているこの曲の歌手も出演します」とカンナが言い切ったから、流石にこれには一同、口をぽっかり空けて驚いている。カンナが曲名も歌手名も言わないのが面白い。カセットの録音では「ボブ・レノン」と聞こえるはずだが、本人が「パクリだ」と明言しているので体裁が悪いか。コンチも曲名を聞きのがしたな。
また、「遠藤ケンヂ」の名を出すと、テロリストの印象がまだまだ強いだろうから集客には向かないか。続いてカンナは「絶対に出演します」と言った。絶対に出演する場合は、こういう風には言わないだろう。願望がこもっています。「だから、みんな万博会場に集まって」とカンナは頼み込む。サナエとカツオがこの実況を聴いて驚いている。ここでカンナが絶句して、コンチが交代。ついに公演の日時を言わずに終わった。まだ決まっていないもんね。
まだも何も、このあと街中に貼るポスターにも日程の記載がない。1997年の「ともだちコンサートですら日付は入っていた(ただし、あれはなぜか会場の記載がない)。なんせ「あの歌手」が何処で何をしているかすらわからず、おおぜいの出演者もこれから出演依頼をしなけければならない。それも多分ギャラなしで。時間もない。そうなると縁故を頼るしかない。
(この稿おわり)
上野公園さつきフェスティバル (2013年6月2日撮影)
Heard the singers playing, how we cheered for more
The crowd had rushed together, trying to keep warm
Still the rain kept pouring, falling on my ears
And I wonder, still I wonder who'll stop the rain
シンガーたちの歌を聴いてきた
これ以上に元気が出るものはない
観衆は競って集まった 暖を取るために
でもまだ雨は降っている 俺の耳にまで降り注ぐ
そして不思議に思う いまなお不思議に思う
この雨はいったい誰が止めるのだ?
Creedence Clearwater Revival ”Who'll Stop the Rain”
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