おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

仮説「カツマタ君」 (20世紀少年 第688回)

 今日も雑談風です。第21集においてキリコの記憶としてサダキヨではないナショナル・キッドの少年が初登場した。これまで、このコの話題を出すたびに、もう一人のナショナル・キッドなどと書いてきたのだが、もうそろそろ面倒になってきた。これからは、かなり乱暴な仮説であるが、彼をカツマタ君と呼ぶ。そうする理由は単なる省力化だけではなく、そろそろ次の点について間違いなさそうだと実感してきたからです。

1) 「21世紀少年」において、ケンヂが最後に声をかけた中学生の男子は、彼の想像どおりカツマタ君である。

2) カツマタ君は死んでおらず、少年時代はナショナル・キッドのお面をかぶっており大人になってフクベエになりすまして”ともだち”になった。


 これらが絶対間違いないという決定的な証拠は、たぶん何度読み返しても出てこないだろう。通常こういうときの犯人捜しやお裁きは、ヒ素入りカレーの事件のように、状況証拠をふんだんに積み上げて、誰がどう見てもこの人物しか有り得ない、他の誰かがやったとは考えられないというあたりまで固めていかなければならない。

 それほどまでの苦労をするつもりはないが、楽しみながら読んで感想書いてという範囲で、できる限りのことはいたしましょう。すでに書いたように、カツマタ君の”ともだち”は理系的であり、理系に生物系と機械系があるとすれば機械系の傾向が特に好みのようで、エンジニアリングやメカニックに強い感じ。これからも円盤だロボットだ何とか爆弾だといろいろ出てくるのに対し、フクベエは単にケンヂたちの真似をして巨大ロボットを歩かせたにすぎない。

 
 また、これも示唆してきたことだが、カツマタ君はヴァーチャル・アトラクションにも詳しい。実は彼が主導してボーナス・ステージをこしらえたのではないかと思われる程で、第14集では人間業ではない侵入の仕方をしてヨシツネたちを驚かせているし、「21世紀少年」ではケンヂを翻弄する。なんたって理科の実験大好きカツマタ君であり、「死んだ」あとも理科室に幽霊になって出てくるほどサイエンスが好きなのだ。ドンキーとなら話が合ったろうに。

 カツマタ君の”ともだち”が鉄人28号のファンだろうと思われる場面は後に出てくるので、それはそのときに考えるとして、彼が復活して見せた万博会場にあるニセ太陽の塔の真ん中の顔は、鉄人28号の人相を悪くしたような代物で、すでに第1集で万丈目が検品のため工場を訪れている。だが、第7集でショーグンと角田氏が海から上がって見た建設工事中の太陽の塔は、天辺こそ目玉マークだが、真ん中の顔はオリジナルの岡本太郎作品と同じであった。


 カツマタ君はわざと塔の顔を取り替えたらしい。彼が必ずしもフクベエに好意を持っているとはいえないシーンがこれからも出てくるが、すでに第16集にも出てきた。バーチャル・アトラクションの衆人環視の中で、フクベエ少年の両脚を引っ張って「お前はここで死ぬんだ」と言っている。これはある意味で意趣返しでもあるのだが、それはその時が来たら話題にしよう。

 ところで、このときのヴァーチャル・フクベエは、両脚を引っ張られるまで平然としている。目玉マスクの男が表れても、その前に老いた万丈目が入ってきたときも平然としている。これはフクベエの少年時代の人格ではない。大人の”ともだち”たるフクベエの人格でなければ、こういうことにはならない。この細工もカツマタ君の仕業かもしれない。彼は後に似たようなことを自分自身でやっているし、万丈目が驚いたように本当の1971年を見せつける必要はフクベエには無いのだ。


 さて、そろそろ第21集に戻ろう。部屋に閉じこもった誰かが「敵は?」という妙ちきりんな(静岡の方言らしい。ネットの各種辞書には「妙ちくりん」と書いてある)質問を受けて、コンチは「はあ?」と返事になっていない返事をしたあとで、相手に「あんた、いつからそこにいるんだ?」とまともな質問をしている。先方は「3年」と答えた。西暦が終わった前後であろう。部屋の中にも三年か。おかげでウィルスも消えたとコンチは誘いだそうとしている。

 まさか3年間も「白のソナタ」だけ食べていたんじゃないなろうなと疑っているのだが多分そのまさかだろう。コンチもコンチで、3年間、誰ともしゃべっていなかったので、この変な対話自体を喜んでいる。だが、他にも人がいたという発見の単純な喜びも、このあたりまでであった。二人の会話は過去にさかのぼり始め、それぞれ話題に重大な共通点があるのに、話はすれ違ってばかりでなかなか噛み合わない。




(この稿おわり)





カエデの新緑も悪くない。 (2013年4月5日撮影)

































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