おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

児童A (20世紀少年 第598回)

 
 少し前のページに戻ります。第18集138ページ目で、コンチが指さしているビートルズのアルバムの両脇にあるジャケットのことだ。向かって右はおそらくニール・ヤングの代表作の一つ、「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」だろう。

 向かって左側を知らない古いロック・ファンはいないと思う。”Derek and the Dominos”の二枚組のアルバム、”Layla and Other Assorted Love Songs”。エリック・クラプトンが歌う「レイラ」が入っている。桑田が初めて原と会った時、彼女がピアノで弾いていたというクラプトンの曲というのは、多分これだろう。名曲。


 さて。APが見つけた「もっとヤバいもの」とは、万国ちびっこビックリショーというテレビ番組の録画であった。1972年放映。あさま山荘事件の年だ。春さんとマルオは番組名に覚えがないようだが、とにかくまあ似たような名前の番組が昔はたくさんありました。冒頭の出演者は円周率100桁を暗記している中国人少年。いるだんよな、こういうのが。何とか線の駅の名前を全部言えるとか。それしかできないのに威張る子。

 「はい、来週はもっとビックリです」とチャックさんは満面の笑みを浮かべて、アナウンサーの質問に答えている。来週は何と念力少年の登場らしいのだ。念力を使って何をするのかという質問に答えて、興業主の万丈目はこう答えている。「念力でスプーンを曲げます」。ああ、また出て来た、スプーン曲げ。念力持ってるなら他の見せ方もあるだろうに。


 春さんとマルオの顔は真剣そのものである。マルオは少年時代、道端で子供相手に怪しげな宇宙食シーモンキーを売りつけようとしていた万丈目を見たかもしれないが、その記憶があったとしてもこのチャックとは結びつかなかったか。「この続きは?」と彼は訊いた。APは「ありません」と答えた。次の週でこの番組自体が打切りになったらしい。

 彼はまたも追加調査をしてしまい、地雷を踏んでいる。新聞の縮小版に、その事情を伝えるベタ記事が残っていたのだ。見出しは「スプーン曲げ児童 インチキで番組打ち切り」。マルオが読む記事の内容によると、スプーン曲げが虚偽であることが判明したため、放送局は番組放映を直前になって自粛した。

 そして、児童Aを紹介した芸能プロダクション経営の万丈目淳一郎(まともな名前である。この親不孝者。)から事情聴取することになった由。APは「万丈目って(もう呼び捨てか)まるでテレビ屋の発想」みたいだと困惑している。なお、かつてテレビ番組で子供がスプーンを曲げて見せたのはインチキだったという週刊誌の報道が実際にあった。その子は私やフクベエと同年代のはずだが、今どこで何をしているのだろう。


 春さんは「小さなニュースだが、これらが今まで封印されていたということは...」と言いよどみ、マルオが後をついで本人を目の前にしながら、「関係者は口封じされた」とありのままに述べた。APは「どうしよう」と恐れおののいている。「いや、これは大発見だ」とマルオは称賛しているが、当人はここでほめてもらっても困るよな。

 まあ、大丈夫だろう。困ったときの神頼みという言葉がこの国にはあるし、頼むに足る神様もいるのだ。それよりも、春さんとマルオは「もう一つ気になるのが、児童A」という点で意見の一致をみた。万丈目がその児童Aについて、オッチョとカンナに語るときがきた。



(この稿おわり)




うちにもあります。 (2012年1月3日撮影)





 きっかけぐらいはこっちでつくってあげる − 少女A



























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