おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ローラーゲーム (20世紀少年 第597回)

 第18集第9話の「見てはいけないもの」はテレビ局が舞台となって、進行役はアシスタント・プロデューサー(AP)の青年、登場少年は春波夫さんとマルオである。このTTVというテレビ局は外観からすると後にカンナやコンチが乗っ取ったテレビ局とは違うようだ。

 APは二人を呼び出したらしく、すみませんわざわざなどと恐縮している。春さんは新番組の主題歌の打ち合わせもあったからねと心遣いを忘れない。彼は下の人に優しいのだ。その場で披露している「皆の衆」で始まる新曲は、APもヒット間違いなしと褒めているが、原曲ともいうべき歌も昔、村田英雄がヒットさせている。映画では万博の歌の一部になっていました。


 APは二人を小部屋に案内している。会議中という札をかけ、ドアの外の様子をうかがっているところをみると機密を扱う打合せであるらしい。用件を切り出したのは春さんであった。「例のラジオの放送局」は判明したのかという質問を投げている。

 APは調べること自体はそれほど難しくなかったという。三角測量を使ったようだ。「ただ」と彼は言った。「ただ?」と春さんは訊いた。突き止めたラジオ局の所在地は北海道、「壁の向こうのそのまた向こう」だそうだ。APは不思議がっている。北海道はウィルスで全滅したと公表されていたらしいのに、どうやら生き残りがいるらしいのだ。仲畑先生も生き残った。


 春さんは行って確かめる方法はないかと、カンナと同じような発想をした。マルオによると、東北なら巡業を組めるがその先は国境封鎖されているのだという。まだ2014年の段階では、彼は室別に行くことができたのだが、今や東京を包囲する壁を乗り越えるだけではなく、国境封鎖を破らない限り、そのまた向こうには行けない。

 セブンイレブンが北海道限定で「皆のシュー」というシュークリームを販売しているらしい。コンビニに出入りするのは主に若い世代だろうけれど、そのうちどれだけの人が村田英雄(歌手の彼)を知っているであろうか...。


 APは流れているあの歌は何かと二人に尋ねているのだが、一瞬マルオと目を合わせてから春さんは「君は知らないほうがいい」とアドバイスした。ところが別の意味で、手遅れだったのである。彼は既に「見てはいけないもの」を見てしまっていたのだ。

 APは上司に命じられて雷神山ブームの次を狙ったスポーツ番組のネタを発掘しようとしていたらしい。ところで、一時期、力道山が所属し、大鵬を育てた名門、二所ノ関部屋が閉鎖される見込みと新聞で読んだ。何とかなからいものなのか。相撲部屋や親方の名はどれも古典的で美しい。


 その作業中に彼は古いビデオ・テープで、ローラーゲームなるものを発見したという。マルオが東京ボンバーズと即刻、反応を示した。マルオが好きだったヨーコは私もよく覚えている。春さんが名を挙げているミッキーは残念ながら覚えがない。ヨーコは長髪をなびかせてレーンを走り抜ける。159ページの下段で熊のような大男に殴り倒されている背番号9が彼女だ。

 今のローラー・スケートは車輪がカラフルで縦一列に並んでおりフィギュア・スケート風だが、昔のは絵のとおり自動車のタイアのように並んでいていた。マルオは子供のころ、あれのおかげで一大ローラー・スケート・ブームになったと嬉しそうにしている。


 やはりマルオたちは都会っ子だなー。私たちは買えなかったし、そもそも幅が広くて交通量が多い車道以外は舗装されておらず、雨が降るたび轍に巨大な水たまりができて、器用につながったトンボが産卵に来るような道で、しかも石ころだらけときてはローラー・スケートは無理だわ。

 この中に僕が見ちゃいけないものが写ってるんですと言って、APはビデオ・カセットを一つ取り出した。再生するとローラーゲームの番組が収録されている。そこに闖入者が一人。変な男が新しい団体を作って東京ボンバーズと倒すと騒いでいるらしい。


 この蝶ネクタイの男は、第14集のヴァーチャル・アトラクションの中で、尾崎紀世彦を知ってんだと威張っていた男に似ており、ビデオではチャック万丈目と名乗っているらしい。第11巻に出てくるモンちゃんメモにも、万丈目とローラーゲームの関わりについてサダキヨの証言が残されていた。

 APの話は続く。彼は不安なのだ。万丈目さんの経歴はハーバードのビジネス・スクール卒業後、一流企業の経営コンサルタントをしていたことになっていらしい。ところがここに写っているのは「怪しい興業主みたい」なチャックだ。止めとけばよいのにマスコミの人は好奇心の塊である。さらに調べたところ、もっとヤバいものが見つかったのであった。



(この稿おわり)




今年最初の初詣はここで。大山祇命イザナギイザナミのお子さん。
(2013年1月1日撮影)


















































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