おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

アケボノバシ (20世紀少年 第535回)

 今回は雑談と写真から始めます。オッチョから「Jumpin' Jack Flash」を教わってケンヂはロックにのめりこんだはずなのに、その後あまりストーンズの話題や絵が出てこないのは少しさみしい。わずかに、27歳で死んだロッカーの中に、ブライアン・ジョーンズの名が挙がっている程度ではないだろうか。


 前に帰省したとき、実家で古いLPレコードを見つけた。私は80年代、二十歳を超えてからローリング・ストーンズを聴き始めたこともあって、最初はベスト・アルバムから入った。そのころ買ったに違いない彼らのベスト・アルバム第二弾、「Through the Past Darkly」が実家に残っていたのだ。



 そのLPジャケットの見開きに曲目が並んでいる。しょっぱなが「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」だ。「マザーズ・リトル・ヘルパー」も「夜をぶっ飛ばせ」も入っている。

 B面は、「ストリート・ファイティング・マン」で始まり、「ホンキー・トンク・ウィメン」で終わる。「シーズ・ア・レインボウ」も「ルビー・チューズデイ」も聴ける。うちにレコード・プレーヤーがないのが難点だが...。

 収録曲のリストの上の方に、この写真では薄くて読めないが、発売直前に亡くなったブライアン・ジョーンズへの弔辞が載っている。1969年、ウッドストック・フェスティバルの直前に他界した。死因は諸説ある。



 イントロはロックの命と言ってよかろう。腕利きのリード・ギタリストがいるバンドの曲は、たいていギターの音から入るものだ(こう言ってはなんだが、ビートルズはボーカルから入る曲が多い)。

 タクシー・ドライバーでその名を知った映画監督のマーチン・スコセッシは音楽が好きな人のようで、「ニューヨーク・ニューヨーク」や「ラスト・ワルツ」がお馴染みだが、何年か前にストーンズのコンサートを映画化している(”Shine a Light”)。

 ストーンズは意地悪で、監督が頼んでも演奏曲目を教えてくれない。やむなくスタッフは過去のストーンズ作品を片端から聴いて調べた結果、約7割の曲がキース・リチャーズのギターから始まっていることをつきとめ、本番のライブ会場での演奏開始時、メインのキャメラをキースに向けた。大当たりであった。


 ロックに定義はないとケンヂは言う。でも、ともだちコンサートで聴いた曲はロックではないとも言った。では何をもってロック性を語るか。例えば歌詞ではどうか。私は正直に言うと先ずは歌謡曲で育ち、フォークも良く聴いたし、ロックこそ自分の成分表示であると言い切れない過去を持つ。でも歌謡曲の歌詞にだって、ロックというべきものは無数にあるに違いない。

 山本リンダ、「こまっちゃうナ」の歌詞。一番好きな箇所は、「ママに訊いたら、なんにも言わずに笑っているだけ」。これはストーンズの人気作、「メイン・ストリートのならず者」(当時は、exileという英単語はそれほど日本で知られていなかったのです)の2曲目、「Rip This Joint」の冒頭の歌詞、「Mama says yes. Papa says no.」と共通の精神を持つ。ちなみに1曲目の「ロック・オフ」もかっこいい。ブラスの入り方のすごさよ。


 あやうく雑談で終わるところであった。第16集の25ページ目。怪我をして倒れていた男は起き上がり、サナエとカツオに投降前の頼みごとをしている。すなわち、ゲンジ一派にも氷の女王一派にも、当局のスパイが入り込んでいて情報が筒抜けになっているので、それを氷の女王に伝えてほしいというのだ。8月20日武装蜂起も、飛んで火に入る夏の虫のような大失敗に終わるであろう。

 男によれば、旧都営新宿線曙橋駅の近くにある喜楽庵というソバ屋が、氷の女王のアジトの入り口であるという。ソバ屋とは、存外おおっぴらですな。地下鉄の線路を歩けば表に出ずに行けるはずだというのだ。曙橋は外苑東通り靖国通りをまたぐ場所にある陸橋で、血の大みそかの夜、巨大ロボットもこの橋を渡ったはずである。


 外の地球防衛軍は相変わらずやかましい。これだけ姉弟に言い残して、男は「うるせえなあ。投降するよ。」と言いながら電車から降りて行った。サナエとカツオは、この強引なお遣いの頼みごとを断る暇もなく見送っている。

 オッチョの指示は歌舞伎町教会の神父への伝言のみだったし、サナエが入りたがっていたのはゲンジ一派のほうで、氷の女王とは直接、関係のないミッションである。聞き流してもよい依頼だった。だが、そうはいかなくなったのだ。




(この稿おわり)




ウマオイ (2012年10月21日撮影)

























































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