おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

週刊ポストと号外 (20世紀少年 第533回)

 第17集の18ページ、初めて見る電車に感激しているカツオのかたわらで、サナエが持つ懐中電灯が照らし出したのは電車の宙吊り広告であった。週刊ポスト小学館発行、5月1日号、340円。ちなみに、その右隣の「未来」とか「子」とか書いてあるのは同じく小学館の「ワンダーライフスペシャル」か。裏側の「の空」は、「俺の空」のリバイバルか?

 ポストに戻るとメインの記事は、総力特集「人類は滅亡するのか!!」である。かつて小学館は、第1集の秘密基地のシーンでも出てきたように、週刊少年サンデー学年誌において「地球は滅亡する」等の特集を組み続けて、子供を驚かせ怯えさせて喜んでいたため、ケンヂ達をして「よげんの書」を書かしめるに至った。その責任は重い。


 それを大人向けの週刊誌でやる事態に陥ったのだ。「全世界パニック」、「30億人死亡か」。ポストに限らず週刊誌は大げさだが、「全世界」かどうかはともかくとして少なくとも、「アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリス、アフリカ、オーストラリア」ではウィルスが猛威を振るったとみえる。本当に30億人なら、この時点で人口はほぼ半減。

 その横に「これだけは知っておきたい対策」が五つ。その1、身を守る必需品一覧。私が子供のころ「放射能雨」が降るのは常識であり、大人はそれを防ぐために「帽子をかぶっていなさい」と言った。その2、握手をしないあいさつ。エイズが登場したときも同じような騒ぎになった。


 その3、「窓を開けるな」は本当か。これの効能は、この物語の先々で人々が信じている様子である。しかし一般的に「本当か」という記事の語尾は、普通に受け止めると大して意味がない(窓を開けても大丈夫)という中身であるはずだ。本当か。

 その4、牛は危険なのか。その5、鶏は食べても大丈夫か。確かに、BSEとか鳥インフルエンザとか、新種の病気は恐ろしいし、実際に多くの病気同様、動物が罹るということは、人間も罹るおそれがあるということだ。この情報のおかげで、カツオのじいちゃんは牛が食えなくなり、神様はコンビーフ仕入れることになった。


 その隣もいかにも週刊誌らしく、「特集1 生き延びるための徹底マニュアル」、「特集2 あなたの周りは大丈夫か!? 死のウィルス10大症状」。少なくとも10以上の症状があるのだろうか。2015年当時は風邪を引いたような症状のあとで、いきなり出血して死んだようだが。過去の週刊誌に文句付けていると切りがないけけれど楽しい。


 問題はその次で「世界最後の希望」、「ともだちは救世主」、「ローマ法王が”奇跡”と認定」。これは万博の開会式の出来事に関連するものだろう。サナエはこれを読みながら、自分の知りたかった近代史が載っていると言い、3年前の週刊ポストを読みたいと願っている。すると、以上のことは教科書にすら書かれていないということか。おそるべき独裁政治の情報統制である。

 足元で音がして、サナエは「毎朝新聞」の号外を踏みつけていることに気が付いた。小学館は新聞系の報道機関ではないので、週刊誌は本名を使えるが、新聞は無理。号外の日付は2015年5月5日。号外は週刊ポストの発売と前後して配られたものだろう。このころまで西暦はあったのだ。


 号外には大きく、「聖母降臨」と書かれている。サナエには、この意味も分からない。こんな目出度いニュースはないはずなのだが、この後は聖母情報を公にできなくなったということは、聖母たるキリコを表に出せない事情があったからで、それは後に語られることになる。

 その下の見出しは途中で切れているが、おそらく「死のウィルスにワクチン」云々であろう。サナエが音読するところによると号外記事の冒頭は、「四日未明、友民党は”ともだち”の声明として、”聖母が降臨”したことを発表...」となっている。無理して「しんよげんの書」にこじつけたのだろうが、携えてきたのが天国が地獄なのか明らかではない。


 2015年のゴールデン・ウィークのころ、”ともだち”はもったいぶってワクチンができたことを公表したらしい。しかし日本では、血のおおみそかの時とは少々異なり、東京は壁で隔離され、万博の開会式参加者にしかワクチンは配布されず、それを巡って大変な騒ぎになった。

 内藤先輩やサナエのみならず例のマフィアたちまで、”ともだち”の統治はおかしいのではと思うようになった。そういう意味で、かつては殆ど孤軍奮闘状態だったカンナや秘密基地の仲間たちは、賛同者を得やすくなった。だが、相手はそれを上回る暴力と陰謀で圧倒してくる。「お姉ちゃん、誰かいる!」とカツオが騒いで、姉弟は新たな難局に直面することになった。



(この稿おわり)





白鷺の舞い立つとき (2012年10月21日撮影)















































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