おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

地球防衛軍 (20世紀少年 第524回)

 地球防衛軍と聞いて、オッチョは何を思い出したのか。最初のうち私は、この物語において騒動の元になった「ウルティモマン」のバッヂが漫画の設定上「地球防衛軍」のものではないかと思ったのだが(たしか、映画ではそうなっていた)、第22集第10話の絵を見ると、そうではなくて「宇宙特捜隊」のバッヂになっている。

 ところで、このマンガには鉄人28号ジャイアントロボを始めとして正義の味方が実名で無数に登場するのだが、どうしてウルトラマンだけは、ウルティモマンという仮名で出てくるのだろう。著作権か何かの問題? それとも、悪に利用されることになったので、本名は差し控えたか?


 ともあれ、そうとなるとオッチョがサナエから説明を受けて驚いた「地球防衛軍」はウルティモマンとは無関係であり、別件として彼の記憶のどこかにあったのではないかと思い、試しにネットで「地球防衛軍」で検索してみたら、まあ、いろいろたくさん出て来た。似たような名前まで含めると大変な数になる。ここまで地球が防衛される必要があったとは。

 中には1957年、日本映画史上、初めて巨大ロボットが出て来た(ウィキペディアによる)「地球防衛軍」という映画まであるらしい。ただし、これはオッチョや私が生まれる前のことで、われらの世代で地球防衛軍といえば「宇宙戦艦ヤマト」であろう。


 正義の味方を主人公にして、映画やドラマ、マンガやアニメを作るときは、悪役は憎まれるべき存在でなくては格好がつかない。私たちは心のどこかで悪役にも魅かれやすいし、判官贔屓という独特の国民性もあるので、ちゃんと嫌われないと主役がかすんでしまう。

 この点で、うまくいかなかった代表例が中学時代にテレビ・アニメになった「宇宙戦艦ヤマト」であるというのが個人的な印象として強い。ガミラスの悪党連中の肩書や名前は、あきらかにナチスを意識して作られており、関係者やファンが後からなんと言おうとナチス的である。


 ところが、総統のデスラ−に妙な人気が出た。今でもよく覚えているのだが、その少し前まで女子の話題の中心はオスカルとアンドレだったのに、突然、デスラ−総統が人気の的になってしまった。実は私もそうで、このアニメを見る楽しみはデスラ−のクールさと、船長おなじみの「地球か。何もかもが懐かしい」という決め台詞であった。あとは、どうでも良かった。

 地球防衛軍ガミラスと戦うにあたり、昔の帝国陸海軍のように物資の調達に苦慮したようで、あろうことか戦艦大和を沖縄近くの海底から引き揚げて、宇宙のかなたに飛ばしてしまう。流行語は何といっても「ワープ」。僕らは立場が悪くなってどこかへ逃げるときに、「ワープするわ」と言い残して去った。


 当然ながら「20世紀少年」を除き、すべての正邪の闘いにおいて、地球防衛軍およびその類似品は、人類の味方、正義のヒーローであった。私にとっては、何よりも「科学特捜隊」が群を抜いて特別の存在であり、例のバッヂも含めて、作者もおそらく同様の愛着を抱いてみえるのであろう。

 ウルトラマンの主題歌の冒頭、「胸につけてるマークは流星」をカラータイマーのことだと思い込んでいる人が多いようだが、私見では、あれはカラータイマーではなく、科学特捜隊が胸につけている流星をかたどったバッヂのことである。

 主語が違うとおっしゃるか? 主題歌の歌詞を3番ぐらいまで読んでいただきたい。それぞれ最初のフレーズの主語はハヤタ隊員である。「手にしたカプセル」は、ウルトラマンが主語であるはずがない。


 あの科学特捜隊のバッヂ、誰だって欲しかったのだ。ケンヂも、マルオも、ナショナル・キッドのお面の少年も、あれがほしくて、ガムなんぞ買っていたのだ(昔のガムは美味しくなかったし、ベタベタくっつくので私の周囲の子供には、それほど人気がなかった。風船ガムを除く)。「悪い奴らをやっつける われらは科学特捜隊」。

 科学特捜隊は対ゼットン戦を筆頭に、なかなかよく戦っていたという覚えがある。肝心なときに不在となるハヤタを安易に解雇せず、辛抱強く使い続けた点も評価に値する。この雇用維持の伝統は、ウルトラ警備隊ほか後任の諸軍にもきちんと受け継がれている。

 地球防衛軍にせよ、科学特捜隊にせよ、とにかく正義のために命を賭けて戦う人々でなければならない。それが今、”ともだち”一味に悪用されようとしている。オッチョならずとも、かつてウルトラマンら正義の味方の薫陶を受けて育った者であれば、怒り心頭に発するであろう。で、とりあえずテレビの修繕である。




(この稿おわり)




用水路を泳ぐハヤの群れ (2012年10月21日撮影)











































































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