前回(昨日のブログ)を書いてから、この私にしては珍しく何日か考えました。せっかくの500回記念の最後に、何が何やら分からんと言ったまま、先に進むのも不本意である。例によって好き放題の推測混じりであるが、自分なりの解釈を試みた結果を書き残します。
階段につり下げられたテルテル坊主のそばにサダキヨを連れて行ったフクベエは、相手の顔にナショナルキッドのお面を押しつけながら、全部おまえがやったことにしろと言い、さらに自分は大阪に行っているのだからと一方的に失敗の責任をなすり付けた。そして守秘義務まで課し、その罰則は、しゃべったらもう友達ではなく、しかも「しゃべったら殺すぞ」であった。
この会話の中でのフクベエのセリフに、もし誰かに「なんでこんなことしたんだって聞かれたら、うるさいな、なんだっていいだろって答えるんだ」という一言がある。これがなかなか興味深い。なぜならば、第8集のヴァーチャル・アトラクション(VA)内での会話に、似たようなやり取りが出てくるからだ。
テルテル坊主の陰の会話は、第8集のVAと第16集の歴史的事実(だと思う)とではずいぶん違うと、第8集のところで軽く書いたまま問題を先送りにしたのだが、ここで先送りされた問題が届いてしまったのである。さて、VAでコイズミとヨシツネが盗み聞きしようとしている会話は次のように始まる。
第8集の204ページ、階段の下から見て向かって右側の少年は、ヨシツネによると上ばきの色が違うのでサダキヨだということになっていたのだが、その子は「おまえ、なんでこんなことしたんだよ」と左側の子を問い詰めている。
これがサダキヨのセリフとは思えないと第8集のときに書いたのだが、これは前出のとおり、第16集でフクベエが口にした「なんでこんなことしたんだって聞かれたら」という想定の質問を、VAで誰かに語らせたたものに違いない。
相手の答えもF&Qどおりであった。すなわち、向かって左側の少年、現実ではフクベエであるはずの質問されたほうの子は、「うるさいな、なんだっていいだろ」と、本当のフクベエ少年が用意した答えどおりに答えている。VAのこの二人は誰なのだろうか。
答えは第9集の屋上に出てくると考えた。向かって右側の「おまえ、なんでこんなことしたんだよ」と訊いたほうは、上ばきがサダキヨのものであっても、別人格であり、屋上でナショナルキッドのお面をかぶっているほうであろう。
この続きでフクベエに「もし、しゃべったら本当の友達じゃかないからな」と言われたときの、「わかってるよ。言わないけどさ」という口の利き方も、屋上での話しぶりも、彼はサダキヨ的ではない。もう少し反抗的である。夜の理科室でナショナルキッドのお面をかぶっている少年も同様であった。ここでは顔も名前も分からない。
そして、向かって左側の少年は、屋上で忍者ハットリくんのお面を付け、その下の顔は大人のサダキヨ先生のそれであり、このVA内において”ともだち”の少年時代を演じている者であろう。最初にコイズミのスカートを引っ張って「遊ぼ。」と言ったのも、テルテル坊主作戦で失敗したのも、屋上で「顔をみせたら、ともだちになってくれる?」と言ったのも、架空のサダキヨであり、VAにおける”ともだち”の少年時代である。
フクベエはこの階段に居てはならない。テルテル坊主の失敗に、彼が関わっていたのでは体裁が悪いのだ。したがってVAでのフクベエは、あくまで肝試しに来た勇気ある少年たちの一人であり、テルテル坊主を笑い飛ばして帰ってしまったコンチやモンちゃんたちと同様の登場人物でなければならない。念のため新聞の日付を1年ごまかしたのも、そのためだ。
さて、それでは、第8集において、壁に「たすけて」と無数のSOSを書き残し、コイズミ同様、ボーナス・ステージに送り込まれた少年は、VA内でどんな体験をしたのだろうか。最初はコイズミと同様、「遊ぼ。」と言われたのだろう。しかし、それから先はコイズミと同じ行動をとったという保証はない。
とはいえ、結果的には彼女と同じく「くびつりざか」にたどりついた。そして、彼女と異なり、「ともだちとあった あそんだ」のである。彼はヨシツネ少年に引き留められなかったのだろうか。それとも、振りほどいてテルテル坊主の裏側を覗いたのだろうか。
推測しようもないが、とにかく一緒にテルテル坊主で遊んで楽しくて、「取りこまれてしまった」のであった。もしかしたら、早々に首吊り坂の屋敷に到着して、現実とは異なり、上手いことテルテル坊主を揺り動かして、ケンヂたちを逃げ惑わせて楽しんだのかもしれない。
第16集では、サダキヨを脅迫中のフクベエが、「誰かいる」ことに気付いた。VAに再現されていたとおり、ヨシツネがケンヂとオッチョの様子を見に来たのだ。その途端に二階からその両名が怯えながら逃げてきた。このあたりは、第8集と変わりがない。
その続きが第16集にある。どさくさに紛れて外に逃げ出したフクベエとサダキヨは、植込みの陰に隠れて、ケンヂたちの会話を聴いている。ケンヂとオッチョは「本物の幽霊見た」とヨシツネに伝えた後で、3人で逃げ去ってしまった。ショーグンが角田氏に、「それ以来、そういうマネはやらないことにした」というほどのショックをオッチョは受けている。
残されたのはフクベエとサダキヨの二人。「僕も見たい。僕に見えないわけがない」とフクベエは相変わらずである。サダキヨは、幽霊なんていないって言ったじゃないかと至極もっともな反論をしているのだが、相手は常人ではなくなっているのだから効果がない。かくて、二人は屋敷に戻り、二階へと向かっている。
(この稿おわり)
東京駅構内のドーム (2012年10月1日撮影)
.