おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

Route 66 (20世紀少年 第467回)

 第15集177ページ中段のケロヨンの台詞に出てくる「ルート66」は、英語では「U.S. Route 66」と書き、かつての国道66号線のことである。かつてあったと言っても道が消滅したわけではなく、新しい道路網に編入されて、土地土地で別の道路名が付いている。「Route 66」と英語で検索すると無数のサイトが出てくる。博物館まである。

 いまだに旧道がこんなに大人気なのは、昔アメリカで「Route 66」というテレビ・ドラマが好評を博したのも一因だろう。日本でも放映されたらしいが、幼かったせいか、田舎の限られた民放チャンネルではやらなかったのか、私自身は観たことがない。

 それでも何歳か上の世代は良く知っていて、いつかLAで先輩たちと飲んでいたときに、何だ、おまえ知らないのかと笑われた記憶が残っている。また、同名のジャズのスタンダード・ナンバーにもなっている。


 ルート66は北東の端がイリノイ州シカゴで、南西の端はカリフォルニア州ロサンゼルスだ。北米大陸のど真ん中を斜めに突っ切る雄大な幹線道路で、役割としては日本なら中山道のような感じだが、もちろん日本列島より遥かに長い。ロサンゼルスと書いたが、正確には、サンタモニカ市が出発点。

 ロサンゼルスは、狭義には行政区分としてのロサンゼルス市という名称があると共に、べバリーヒルズやサンタモニカなどの周辺都市も含めた「グレイター・ロサンゼルス」とも呼ばれるメトロポリタンを示すこともある。後者は、ひたすら民家やビルが立ち並ぶ範囲の全体が、関東平野に匹敵する広さを持つ。


 ルート66は、サンタモニカの風を受けて東に向かってLAを突っ切り、カリフォルニアの東端でY字路になっている。左に行くとネバダ州でラスベガスに至るが、66号線は右のアリゾナに向かう。アリゾナ州ではフラグスタッフという、西部開拓史の時代に駅馬車の宿場町だったという街を抜ける。

 フラグスタッフまで先輩と電車で旅行し、駅レンタカーを借りて、アリゾナの大隕石孔やグランド・キャニオンを観て回ったことがある。先輩は若くして交通事故で死んだ。合掌。グランド・キャニオンは、コロラドの高原を「帰らざる河」が削ってできた峡谷です。フラグスタッフの標高も高い。北島選手の好敵手だったノルウェイダーレオーエン選手は、ここでの高地訓練中に亡くなった。ご冥福をお祈りします。長く生きるほど、当たり前だが受け取る訃報が増える。


 アリゾナの次は、ケロヨンがダニー少年に会ったニューメキシコ。州都アルバカーキサンタフェも通る。このあたりを旅行したときに、私はカウボーイ・ハットと、「ルート66」というラベルが付いた半袖のシャツを買った。20年以上前のものだが、今でも着ている。物持ちが良いのです。

 自分で車で走ったことがあるのは、この辺までだ。そこから先は地図で調べてみる。テキサス、オクラホマカンザスミズーリと続く。ケロヨンたちがウィルス被害の発生地として地名を挙げているオクラホマクリントンカンザスのカレーナ、ミズーリのホールタウンは、すべてルート66沿いに実在する町の名前である。


 旅の終わりはシカゴ。私の場合、初めての海外渡航がロサンゼルスでの駐在だったので、着任後に最初に出かけたアメリカ国内旅行が、同時に初めての海外旅行みたいなものでもあった。行く先は東部を選び、最初に着いたのがシカゴ。駅でギターを抱えた娘が、「朝日の当たる家」を唄っていたのが印象的だった。

 この曲はボブ・ディランも歌っているが、私が持っているのはアニマルズの録音。朝日の当たる家とは、ルイ・アームストロングの故郷、ニュー・オーリンズにある娼館の名前である。歌詞に出てくる娼婦や博徒の様子からすると、決して朝日は当たりそうもない。詳細は省くがこの曲の歌詞や、本人が唄った曲の歌詞からして、ジャニス・ジョプリンもこの曲が好きだったのだろうと思う。


 シカゴはミシガン湖に面している。私がこの巨大な湖に歩いてたどり着いたとき、そこで初めてトライアスロンをこの目で見た。数百人が一斉にミシガン湖に飛び込むというタイミングだった。失礼かもしれないけれど、ペンギンの群れのようだと思った。

 さて、物語に戻ろう。第10話の「タイム・リミット」。このミシガン湖畔にあるMGC製薬の工場火災のニュースを、ケロヨンの息子がテレビで観ている。ケロヨン親子とダニー少年は、ウィルスの被害を調べながらルート66を北に走り、ミズーリ州まで来ている。一軒のレストランに重要な情報が集まりつつあった。





(この稿おわり)



Route 66 (出典:当家の開襟シャツ)





















































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