通常、万国博覧会には開催地の地名が付きます。大阪や愛知、沖縄や筑波、海外でもパリや上海など。ところが、2015年の「ばんぱくばんざい」は、2014年の工事中のシーンから、ともだち暦3年に至るまで、何か所かに描かれている大会名によると、「EXPO 2015」だけが正式名称らしくて、日本語では万国博覧会としか書かれていない。不審である。
今回はかなり脱線して、趣味の地理と歴史に走ります。2015年万博会場の場所の目安となる情報は少ない。まず、第6集から第7集にかけて、脱獄したショーグンと角田氏は、潮の流れから判断して近距離の木更津方面行きを断念し、川崎方面に向かった。地下の通路から通気口を伝って海上に出たあと、タイ人の密漁船に運ばれ、途中で降ろされてしまったので、泳いで陸にたどり着いている。
密漁船がはるばる反対側の房総半島まで東京湾を渡るとも思えないから、二人が上陸したのは川崎近辺と考えるのが自然であろう。オッチョが驚いたことに、そこには太陽の塔が立っていたのだ(当時はまだ、中央の顔は岡本太郎のデザインだった)。したがって、万博会場は房総側ではなく、東京・神奈川方面にあると思う。
万博会場に入る際に、検問所で蝶野刑事は「歌舞伎町署の蝶野です」と名乗っている。神奈川県か千葉県であれば、「警視庁の蝶野です」と言うはずだから、ここはやはり東京都内であろう。ただし、彼の署の管内ではないことは本人が語ったとおり。また第21集において過労で倒れたカンナをマライアさんと運ぶトラックの運転手は、万博会場と新宿が離れていると言っているので、やはり新宿近辺ではない。
詳しくは第21集のところで書くつもりだけれども、空飛ぶ円盤が赤いペンキで練習を重ねていたとき、なぜか体の前面だけペンキの被害に遭わなかった青年は、湾岸をバイクで走っていたと述べている。
そして、その湾岸にある万博会場でアイスを食べていたコイズミと神様もペンキの被害から免れた。第21集の第8話に万博会場の遠景が何度か登場するが、広い道路の脇にある。これは山が海に迫っている内房の景色には見えない。首都高の湾岸線で間違いあるまい。
この湾岸線の西の端は、ブルーライトの横浜にある。ベイブリッジもこの道の一部です。柳ジョージが慈しんだ本牧から北上し、川崎において東西に走るアクアラインとT字路で繋がっている。右折してアクアラインを東に進めば、オッチョがいた海ほたるがある。そのまま湾岸線を直進すると、神奈川と東京の境を流れる多摩川の河口付近で地下にもぐり、トンネルを抜けると、そこは羽田空港である。
ところで、羽田空港は単なる呼び名であって、正式名は東京国際空港です。でも地名は分かりやすくて、大田区羽田空港になっている。コイズミの会員証に記載されていた大田区新羽田という地名は架空のもの。湾岸線は空港敷地のど真ん中を貫いており、続いて太田の公設市場や私の好きな野鳥公園の横を走る。
お次はお台場。黒船に備えて大砲をあわてて作ったときの台場の名残り。広重の浮世絵などを観ると、昔の品川はもっと山がちの土地だったのだが、このときの埋め立てのために削ってしまった。「踊る大捜査線」の湾岸署もここにある。台場の隣はテニスコートと国際展示場ビックサイトで名が売れた有明。
その次が「夢の島」。昔の姿は写真でしか見たことがないが、ケンヂたちや私が小学生のころ、ここは東京の巨大なゴミ捨て場だった。当時もこの名前。第8集でヨシツネがコイズミを案内した「ともだちランド」のジメジメした薄暗い地下施設のごとく、華やかな高度成長の繁栄振りとは裏腹に、東京の海や川は汚れに汚れた。最近ようやく魚が戻ってきたというのが嬉しい。
東京に限って言えば、湾岸線というよりも、埋立地通りと呼んだ方が実態に近い。ともあれ、夢の島から、うちの近所を流れる荒川の河口を橋で渡ると、東京都の湾岸の東端にある葛西に出る。葛西臨海公園から脱げ出したペンギンについては、以前、話題にしました。脱走者の名前が公募されたとき、私は「オッチョ」を推奨したのだけれども、「さざなみ」という無難な名前に落ち着いた。もう逃げないだろう。
去年だったか、この葛西あたりの古代の戸籍が発見されて、その名の中に「とら」と「さくら」がいて話題になりました。葛西は東京都と千葉県の境を流れる江戸川の河口近くの右岸にある(正確には、旧江戸川という妙な名前にされてしまっている)。寅さん映画に、ときどき川や土手の長閑な景色が出てくるが、あれが江戸川です。
映画の舞台の葛飾は、葛西よりずっと上流方向にあるが、柴又の帝釈天も江戸川べりにあるのだ。すぐ近くには、細川たかしが夕暮れの雨に降られた「矢切の渡し」もある。両さんの亀有も遠くない。さらには、わが家にも水道水を送って下さっている金町浄水場もすぐそばだ。去年の3月、ここで基準値を超えるセシウムが検出されて大騒ぎになった。
次の日以降は放射線の数値も大丈夫だったのだが、近所のスーパーやコンビニや自動販売機から透明の飲み物が入ったペットボトルなどが、一週間以上、完璧に姿を消した。気持ちは分からないでもないが、ひどかった。小さなお子さんのいるご家庭を優先してくださいという張り紙まで出た。
間違って焼酎のビンまで買いあさった人もいると聞いた。さぞかし美味かっただろうなー。昼間から酒が呑めるなんて、うらやましい限りである。あのセシウムはどこに流れたか、沈んだか...。さて、その旧江戸川を越えると千葉県である。浦安のディズニーランドが右手にある。
少し先に宮内庁の施設、新居浜の鴨場もある。皇太子殿下がプロポーズなさった場所であるらしい。湾岸線はその先、東京湾の最深部にある市川市まで延びて終わり。この道の沿道、おそらく都内のどこかに、万博会場はあるはずだ。
(この稿おわり)
ミンミンゼミの横顔(2012年8月18日撮影)
近所の盆踊り(同日撮影)
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