おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

もうすぐ開幕式 (20世紀少年 第463回)

 ロンドン・オリンピックが終わって、早くも1か月が経とうとしている。先日のメダリストの官製パレードは、酷暑の平日というのに、見物客が50万人とは恐れ入りました。ここ荒川区と隣の台東区の人口を足しても届かない人数だ。今の日本は、政治経済も軍事外交も教育医療も思わしくないことばかりなのに、というより、だからこそなのだろうか。

 そうであれば、私が仮に総理だったら反原発のデモの怒りより、こちらの50万人の笑顔ほうに恐怖を感じるかもしれない。あるいは、ほどほどのガス抜きになったかと一安心するか。それにしても率直に申し上げて、はしゃぎすぎだと思う。オリンピックは、選手たちこそ大変だろうが、私も含めテレビ観戦者にとっては、所詮、お祭りである。


 お祭りは、終わったらさっさと気持ちを切り替えて、日常に戻るものだ。仕事や暮らしが待っているのだから。楽しみたければ、次を楽しみにすればよい。中村の兄ちゃんがオッチョに言ったように、あるいは吉田拓郎が歌ったように、祭りのあとは淋しいものだが、それでよい。なんだか説教くさくなってしまった。


 オリンピックの開会式を観ながら、ジョン・レノンポール・マッカートニーと一緒に出てきたらどうなっただろうかなどと、考えても詮のないことを考えた。私が曲を選べるのであれば、一人一曲ずつなどという野暮は無し。

 彼らが若かった頃のように、どっちがリード・ボーカルか分からないようなコーラスが聴きたい。映画「レット・イット・ビー」に出て来たアビー・ロードの録音スタジオで、向い合せに座って仲良く歌っていたやつ。”One After 909”という曲。


 第15集第7話の「防毒マスクのセールスマン」は、万国博覧会の開会式を二日後に控えた現地からの実況中継で始まる。「1970年の大阪万博から45年の年を経て、今こそ”人類の進歩と調和”を。”ともだち”の夢の実現を!」だそうだ。今さら進歩と調和とは、本人が全然、進歩してない証拠じゃないか。このアナウンサー、きっとあの「北朝鮮おばさん」みたいな感じだろうな。警察発表によると、すでに32万人が集まっているらしい。

 蝶野刑事は一大決心をしたようで、一同を爆発物処理班に偽装して車に乗せ、自分の警察手帳で会場内に入ることに成功している。後部座席には指名手配犯のはずのオッチョがカンナと共に怖い顔をして座っているが、幸い助手席のヨシツネおじさんが穏やかに自己紹介したので、検問は素通りとなった。”ともだち”に乗っ取られて以降、警察も不調である。


 あと二日というのに、まだ会場の諸施設は足場を残したままで建設中である。しかも夜間の突貫工事だ。”ともだち”暗殺というアクシデントがあって、工事が遅延したか。開幕式の日付は分からない。大阪万博の開会式が3月14日だし、ヤマさんも円卓会議で当初予定は3月開幕と言っていたから、日付もマネしたか。しかし、このお祭りは終わりもなく続けられたため、後にケンヂに叱られている。

 13番は刑事の車が走り抜けた道沿いにある工事現場のキャットウォークで働いていた。工事関係者に紛れ込んでいたのである。これも変装といえば、変装かなあ...。メイクはしていないが。彼は同僚に見晴しの良い場所はどこかと確認している。その建物のスポットライトの位置からは、法王様がバッチリ見えるらしい。


 さて、この13番が立っている建物は何か。結局、狙撃には使われなかったので、どうでも良いけれど、一応、候補の一つを挙げるとすれば、172ページでオッチョが「ロングキルならソ連館、いや、ロシア館最上部」と言い直している場所が怪しい。ロングキルというのは、英英辞典に出てこないが、長距離の狙撃のことか?

 私は大阪万博に行かなかったし、現在ほとんどの施設が残っていないこともあって、今も覚えている建築物といえば「太陽の塔」とパビリオンでは「ソ連館」だけである。ソ連館の独特の外見は、第16巻でサダキヨ少年が読んでいる資料にも描かれている。てっぺんに国旗のデザインにもなっていた鎌とハンマーが飾られている。壁はもちろん真っ赤っ赤。


 これをマネした「ロシア館」はすでに第7集に出て来ており、ようやく脱獄して上陸を果たしたショーグンと角田氏が歩いて回った万博会場に立ちはだかっている。良く似た絵は、第21集でカンナが万博会場を目指すときの遠景にも登場する。その最上部は、偽の太陽の塔を横から見下ろす位置にあり、その塔が見下ろす先のメイン会場で法王と”ともだち”の御対面がなされている。

 オッチョはロングキルとショートキルの候補地を幾つか挙げたが、蝶野刑事とカンナの発想とは逆で、そこには13番は現れないと断言した。「奴は一級の暗殺者だ」からだ。一級の暗殺者は自爆テロなどせず、生きて還ってこその一級である。仕事の前に見つかっても困るし、退路を断たれても困る。

 オッチョが立つ見張り塔の後ろの道を、突貫作業を終えたらしい工事関係者が引き上げていく。その内の一人、13番が左上を鋭く見上げているが、その視線の先はかつての囚人仲間、3番の背中だろう。この宿敵の裏をかきさえすれば事は成就するとみたか。さて、次回はこの万博会場がどこにあるか考えます。




(この稿おわり)



  


気象情報によると今年の夏は、例年、列島の上空に居座る高気圧が、なぜか東の海上に外れたままになったため、太平洋からの湿った南風が吹き込んできて積雲や積乱雲が発生しやすい状況が続いた。このため、大雨や落雷の被害が多かったらしい。東京も湿度が高くて、蒸し暑かったです。
(2012年8月18日、台東区にて撮影)







"Come baby, don't be cold as ice.
She said she's traveling by the one after 909."

Words and Lyrics by John Lennon and Paul McCartney



















































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