おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2014年     (20世紀少年 第183回)

 波乱万丈の2011年も、残すところ1か月余りとなりました。2014年まで、あと2年少しである。「20世紀少年」は年代で区分すると三部構成になっている。第一部は1997年。血の大みそかで終わり。このブログは、ようやくそこまでたどり着いたところ。

 第二部は、2014年から2015年まで。コミックスの単行本でいうと、第5巻の途中から第15巻の最後まで。第三部は、ともだち暦の3年。第16巻から「21世紀少年」の終わりまで。


 単純にページの分量だけで比較すると、第二部が一番長い。ところが、第二部における「現在」(2014年と2015年)には、ケンヂが出てこない。少年時代と1997年の回想シーンを除き、主人公がここまで長いこと登場しないというのも珍しかろう。

 彼に替って活躍するのは姪のカンナ、再び「ショーグン」と化すオッチョ、そしてヨシツネも忘れてはなるまい。カンナは17歳の高校2年生になっている。最初の読書で、第5巻の128ページ目、「やばっ、遅刻!!」を叫びながら疾走するカンナ嬢の姿を拝見して、この物語はハッピー・エンドに終わるに違いないと確信したものである。


 その少し前の119ページ、街中を歩くカンナの登場により2014年の場面が始まる。彼女は大きなバッグを右手に提げ、バッグパックも背負っているが、これは「ユキジおばちゃん」宅から家出してきたためで、家財道具一式が詰め込まれているのだろう。そして彼女は携帯用のカセット・テープ・レコーダーを聴いている。

 私が大学生のときに、ソニーウォークマンが登場した。それまで、外出先で音楽を聴きたいときはトランジスタ・ラジオの出番だったが、ウォークマンは好みの音楽を待ち出すことができるという画期的な機器であった。昨年、カセット・テープ用のウォークマンは生産停止になってしまったが、これはウォークマンが古びたのではなく、カセット・テープが時代遅れにされてしまったからだ。

 
 2014年において、カンナも「もうカセットなんて売ってないし、修理もできないって言われたんだから」と嘆いている。聴いていた音楽が途切れてしまったらしく、パンパンと音を響かせて叩き直している。昔の家電は、こうして殴ると直ったのだ。最新のIT機器は、これほど素直ではない。

 もっとも、彼女は叩き過ぎたようで、第8巻の51ページ目で蝶野刑事に「ケンジおじちゃん」の歌を聴かるときに差し出したときには、テープで修理が施されている。ともあれ、こうして第5巻第7話の「さいかい」は、歌舞伎町と新大久保を舞台に始まる。新宿の高層ビルの様相が一変している。ケンヂおじちゃんは、かなりの広域を吹っ飛ばしたのだ。


(この稿おわり)



西日暮里公園の木漏れ日。(2011年11月20日撮影)