おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

自動小銃     (20世紀少年 第148回)

 第5巻第4話「のろし」は、地下水道のほとりで「よげんの書」を読んで首をかしげているケンヂの姿で始まる。彼はもともと指名手配されているうえに、ヤン坊マー坊の情報漏えいにより、地下鉄ホームの秘密基地を機動隊に急襲されてしまい、神様の真夢のおかげで何とか逃げおおせたものの、大量の武器弾薬が発見されたため極悪人になってしまったのだ。

 実際に「ケンヂ一派」が所持していたのは、おそらく拳銃6丁とダイナマイトだけなのだが、ラジオの大本営発表によると、大量のTNT火薬、自動小銃22丁、拳銃30丁、手投げ弾50個が押収されたというから、ちょっとした軍隊並みの装備である。外から戻ってきたモンちゃんが、「そんなに持っていたら苦労しないぜ」と呆れている。


 自動小銃という訳語からして、何やら小型のピストルみたいなものだとばかり思っていたのだが、さすがの私も政情治安が不安定だったカンボジアに3年半もいるうちに、少しは銃器の種類や名称を覚えた。自動小銃とは、突撃用戦闘小銃などとも訳され、英語名ではアソールテッド・ライフルなどという。

 自動小銃の世界的なベスト・セラーの代表格は、カンボジアで二つ見た。一つは当時プノンペンの軍人や警官が持ち歩いていたもので、AK47という。旧ソ連製。今年、製造中止になった。重過ぎるというのが理由の一つだった。AKの「A」はオートマチック(自動)、「K」は設計者の苗字カラシニコフの頭文字。カラシニコフ・ライフルとも呼ばれた。

 オウム真理教が、これを密造しようとしたことでも有名である。また、週刊誌で読んだが、警察が取り調べをしたとき、オウムの幹部がAKを「エーケー」ではなく、ロシア語風に「アーカー」と発音したため、ロシアでこの銃の買い付けなり射撃訓練なりをしたのは間違いないということになったらしい。


 自動小銃のもう一つの名作は、アメリカ陸軍の制式軍用銃(今はどうか知らないが、ベトナム戦争時はそうだった)のM16である。ゴルゴ13は、このM16のカスタム(改造銃)を愛用している。かつて、AKよりもM16を選んだ理由をゴルゴが説明している作品があったように思うが、事情は忘れた。

 カンボジアも西部のバッタンバンという第二の都市に行くと、M16のほうが有力であった。私のカンボジア時代の知り合いに、内戦時代、戦車隊長だった男がいた。彼にいわせると、M16よりもAK47のほうが優れていたという。ゴルゴ13に反論するとは、腹の据わった男であった。理由は、水中でも撃てて、壊れなかったから。経験者、おそるべし。


 この元兵士に教わって、私は自動小銃と拳銃の発射音の違いを区別できるようになった。AK47(なんだか、AKB48と似ているな)を警官から拝借して、持たせてもらったこともある。ピストルは手にしても、それほど戦慄するような感触はなかったが、AKはズシリと重く、これが人殺しの道具であることが瞬時に伝わってくる。

 これが本当に22丁もあれば、大戦争はともかく、それなりのテロ行為やゲリラ戦は充分できるというものだろう。しかし、すべては”ともだち”のプロパガンダであった。


(この稿おわり)


南三陸町のクリの木。今ごろ栗の実が、なっているだろうか。 
(2011年10月5日撮影)