おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ロック・スターの早死に伝説    (20世紀少年 第131回)

 レナちゃんに正体を知られた以上、ケンヂはパパイヤ天国の職を失うことになるだろう。しかし、もうこの店で働く必要はなくなったし、そんな暇もなくなってきた。外で待っていたオッチョに、これから霞が関にある巨大ロボットを壊しに行くと告げると、さすがにオッチョも心配して「ケンヂ、おまえ死ぬかもしれないぞ」と声を掛けている。

 これに対するケンヂの反応は「そう簡単に死ぬかってんだ」と勇ましいが、根拠は極めて薄弱である。昔、誰かに聞いた話として、ロックやってると27歳で死ぬという話題を持ち出している。ジャニス・ジョプリンジミ・ヘンドリクスも、ローリング・ストーンズブライアン・ジョーンズも、ドアーズのジム・モリソンも27歳で死んだらしい。そうだったのか。


 私も昔、似たような話を聞いたが、年齢論よりもさらにジンクスじみていて、すなわちロック界の、「J」は早死にする」というものだった。前出の4人も全て、氏名の頭文字に「J」がある。さらに、私がその説を聞いた直前に、レッド・ツェッペリンのドラマー、ジョン・ボーナムと、若死にと呼べるかどうかはともかくジョン・レノンが、それぞれ非業の死を遂げた。

 ケンヂは28歳になったとき、自分はロックではないのかとがっかりしたらしい。しかし持ち前の能天気さで、歳とってもロックやってる凄い奴は一杯いるため(ついでにいうと、「J」の年寄りも一杯いて頑張っている。ジミー・ペイジも、ジェフ・べックも、ミック・ジャガーも)、「死んだらすごいって考え方はやめた」らしい。そのとおりだよ。


 27歳死亡説は俺がお前に話したんだとオッチョは笑い流して、ケンヂと行動を共にすることになる。「20世紀少年」は長編漫画だが、主人公格のケンヂとオッチョが共に戦うシーンは、少年時代を除くと非常に少ない。2000年の夏から年末にかけての数か月と、「21世紀少年」の最後の場面だけである。

 子供のころも大人になっても、たいてい先に頭が働くのはオッチョであり、先に体が動くのがケンヂである。ときにはオッチョがケンヂを突き飛ばすように先に行かせ、ときにはケンヂが止めるのも聞かずに突出する。次に出てくる野球の軟式ボール事件は前者だった。


(この稿おわり)



戦艦三笠を観てまいりました。(2011年10月8日撮影)