おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

つながり     (20世紀少年 第121回)

 第4巻第3話のタイトル「つながり」とは、一つには、儚かったメイとショーグンの心のつながりと思えなくもないが、やはり、ここでは二三十年振りに言葉を交わしたケンヂとオッチョの運命の結びつきのことを指すのであろう。即物的に言えば、タイと日本の間の国際電話回線か。

 3年前の1997年に同級会を開催したときは、さすがのユキジも市原弁護士も、オッチョの行方を調べ上げることができなかった。仮に実家や離婚した家族と連絡が取れたとしても、肝心の本人がチベットバンコクあたりでウロウロしていたはずなので、どうしようもなかったに相違ない。


 しかしケンヂは調べ上げた。同級会と世界の終わりでは事情が異なる。139ページ目に出て来るが、ケンヂは先ず落合家の墓を探し出した。翔太君が眠っているのだろうか。墓石に南無阿弥陀佛と刻まれているから、オッチョの実家は浄土宗か、浄土真宗か。

 ケンヂはその墓に毎年バンコクから花が届けられていることを知り、花屋から発送者がフジヤマトラベルであることを訊き出して、電話を架けてきたのであった。ちなみに、その花屋は他の誰かからも同じ質問を受けており、どうやら、ともだち一味であるらしい。ケンヂとオッチョは電話が繋がる前から、お互い同じ相手のお尋ね者になっていたのだ。


 78ページ目、「信じてくれ、オッチョ。今、俺の話たことは全部、本当だ」というケンヂのセリフから二人の会話が始まっている。ケンヂがどこまで話したかは書いてないものの、読者と同じところまでオッチョに伝わったと思えばよかろう。その続きは、われわれも初耳だったのだから。

 ケンヂによれば、ともだちマークを悪用している者どもは政党まで作り、国政に進出して、とうとう連立与党となり、さらに党員を増やして勢いを増しているらしい。党首の名は、オッチョにとって驚いたことに万丈目であった。バンコクに居続けようと、ケンヂの依頼を受けて日本に戻ろうと、オッチョはすでに当事者になってしまったのだ。


 ただし、この時点でのオッチョは、「悪いが、こっちも今ちょっとたてこんでてな」と言って、一方的にケンヂの電話を切ってしまった。ただし、次の場面は「ラブ&ピースは一時中止だ」という少年時代の彼の雄姿が描かれて、続いてイソノさんに飛行機のチケットをとってくれ、ビザは要らない、日本に戻らなきゃいけなくなったと語っている。

 ケンヂの要件が緊急であればあるほど、オッチョには帰る時期を約束し辛い事情がある。床に横たわるメイの亡きがらには、イソノさんが手を合わせて日本風の礼を捧げていたが、その彼女の遺体を抱き上げて、彼女が死にいたる経緯に関わってしまったオッチョは、先に片付けなければならない用事のある場所に向かうことになる。


(この稿おわり)



近所の諏方神社の秋祭り。太鼓が出て、盆踊りがあるんだぜ。(2100年8月28日)