おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

カツマタ君の噂の初出     (20世紀少年 第33回)

 
 第1巻第4話の題名は「理科室の夜」。この物語の中で、少年時代の出来事としては最も重要な事件である。この夜の理科室のシーンは作品中、何回か登場するのだが、それぞれ回想者の記憶によって、あるいは、ヴァーチャル・リアリティーの設定によって、中身に食い違いがあって私に混乱を招いている。

 「理科室の夜」の場面が初めて登場するのは、ドンキーのお通夜の席上で、ドンキーの飛び降り自殺など信じられないという話をしているうちに、ケロヨンの「そういやドンキー、あのときも飛び降りたっけ」というつぶやきで話がそれて、モンちゃんの回顧談という形で、何が起きたのかが紹介される。

 理科室の夜の事件があったこと自体を、ケンヂとヨシツネとマルオは知らない。ケンヂは熱を出して寝ていたことが後になって分かる。この冒険に参加したのはモンちゃんとケロヨン、ドンキー、そしてモンちゃんの記憶によれば「コンチがいたな。あともう一人、誰だっけ?」というメンバー構成である。


 モンちゃんの思い出話と、仲間の反応はこういう風に始まる。

モンちゃん 「カツマタ君て いただろ?」
マルオ   「ああ、あの何だか知らないけれど、突然 死んじゃった・・・」
ケロヨン  「そう! 理科大好きのカツマタ君。フナの解剖の、前日に死んじゃって。」
ケンヂ   「あっ、思い出した!」
ヨシツネ  「解剖したかったのにできなかったから、夜な夜な理科室にバケて出て、解剖してるって話!!」


 全員一致でカツマタ君は死んだことになっている。ところが、「21世紀少年」の終幕において、ケンヂはヴァーチャル・アトラクションの中で、ナショナルキッドの仮面をつけた中学生に、「おまえさ、カツマタ君だろ?」と声を掛けているのだが、少年は振り向いただけで何も返事をしなかったため、読者はとうとう訳が分からず仕舞いで終わる。

 このエンディングの解釈はとりあえず措いておいて、このあとも何回か名前が出て来るカツマタ君は、ずっと死んだはずのままになっている。一方、「友達の友達」の言うことなどが如何にあてにならないかは、後に出て来る「サダキヨの死亡説」が虚偽であったこと等で示されている。


 疑問はたくさんある。2015年に死んだフクベエの代わりになって、後任のともだちになった男は誰なのか。後任はどうやらケンヂとは旧知の仲のようなのだが、はたして小学校時代の描写で2人登場するナショナルキッド仮面の少年のうち、サダキヨではない方がその男なのか、他の誰かなのか、カツマタ君なのか。ケンヂが出した結論は正しいのか。

 私にはこれを、きれいに解明できる自信がまだないが、理屈っぽいたちなので放置もできず、取りあえずカツマタ君の話題が登場するシーンのそれぞれにおいて、どのようにそれが語られ、どのように本筋と関係しているのかを整理しながら進めることにする。

 ここでは、小学校6年生のときのモンちゃんが、カツマタ君の幽霊が怖いので、用事があるのに夜の理科室に一人で行けず、何人かを道連れに誘ったという設定になっている。これに応じたがために、ドンキーは大変な目に遭うことになるのだ。では、何があったとモンちゃんは語るのであろうか。以下次号。


(この稿おわり)



最近の住宅街では、あまり見られなくなった七夕の飾り。
神楽坂の近くにて。 (2011年7月6日撮影)




































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