おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

学生時代    (20世紀少年 第26回)

 学生時代のケンヂが出て来る珍しい場面がある。第1巻第3話の73ページ目において、「ギターを買った少年」のケンヂが、成長して大学生になっている。時代は1979年で冬服だから、彼は現役合格なら大学2年生、あるいは1年生の終わりごろか。

 彼は道行くご学友に「経済原論、出ねえのかよ」と訊かれている。当時の学制でいえば最初の2年間は一般教養だろうから、断定はできないが私と同じく経済学部かもしれない。

 ここで彼が抱えている黒のエレクトリック・ギターは、キリコ姉ちゃんに買ってもらった白っぽいのとは違うので買い替えたのかな。横に「軽音楽部」の看板がかかっているので、ケンヂは軽音の部員であり、話相手のスパイダーさんは先輩であろう。「今どきジャンピン・ジャック・フラッシュ、弾いてる奴なんかいねえぞ」と言われている。あれ以来、何年も弾き続けているらしい。


 スパイダーさんが「今どき」と言っているように、1979年ごろのローリング・ストーンズは、確かに少し停滞気味だったかもしれない。しかし、間もなく「スタート・ミー・アップ」のリフを響かせて復活し、全米ツアーも成功させて、それが映画にもなった。映画館で観たが、十代と思しき若いファンがスクリーンのそばで踊っていて楽しかった。

 私の記憶に間違いがなければ、ストーンズの連中はそのツアーの直前に、NYの街中で一騒動やらかしている。トラックだったかトレーラーだったかに、楽器やアンプを積み込んでマンハッタンに繰り出し、路上でライブをやったらしいのだ。この時に彼らが選んだ曲は、その場にストーンズのファンがいたならきっと涙を流して喜んだであろう。「Brown Sugar」だった。


 さて、この場面でケンヂは珍しくタバコを吸っている。本作品で唯一の喫煙シーンかもしれない。全体に「20世紀少年」は、酒のシーンなら何回か出てくるが、タバコのシーンはほとんどないから、これは珍しい。スパイダーさんも吸っている。二人ともおそらくボーカルも担当しているのではないかと思う。タバコは喉に良くないのだが、この稼業の人たちには余計なお世話というものだろう。

 どうやらスパイダーさんはメジャーデビューが決まりそうであり、でもギタリストを探しているという。ケンヂは淡い期待を寄せるのであるが、てんで相手にしてもらっておらず、先輩の需要は「キース・リチャーズとミック・テイラーみたいな絡みのできるやつ」である。スパイダーさんも実はストーンが好きで、きっとブルース志向なのだ。


 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の発売後しばらくして、ストーンズの初代リードギタリストだったブライアン・ジョーンズが水死してしまった。次に選ばれたのがミック・テイラーだった。この人の在籍期間はやや短くて、60年代の終わりから70年代の前半にかけて。ロン・ウッドに交代した。

 ミック・テイラーは4枚のアルバム制作に参加しており、私は社会人になって早々、その4枚のLPレコードを買った。今でも実家に残っている。ストーンズの全曲を知っている訳でもないので安易な賛辞は避けるが、とにかくパワフルな時代だった言っても、ファンとて怒るまい。「Time waits for No One」が好きで、今も時々聴いている。

 長くなったので一旦、ここで切ります。
 


(この稿おわり)



「つたのからまるチャペルで♪」 (2011年6月29日撮影)






































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