おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

蛙帝国と銀玉鉄砲     (20世紀少年 第21回)

 第1回の47ページ目に出て来る蛙帝国と正義の忍者舞台の銃撃戦は、1968年のこととあるから、珍しくケンヂたちが小学校3年生のときの描写である。

 ここに登場する少年は3人で、蛙帝国の帝王に違いないケロヨンと、忍者舞台のケンヂ、そして47ページの中段で、「我ら正義の忍者舞台!! 散れ!!」と号令をかけているのは、55ページ目でマルオにキンちゃんと呼ばれている男の少年時代であろう。

 両者の戦闘場面は、第17巻第8話でもう一度、出て来る。今度はコンチが蛙帝国の戦士として登場する。まだ4年生の段階では無かった秘密基地を、5年生のときに建てた設立当初のメンバーは4人、ケンヂとオッチョとマルオとヨシツネ。後から参加したらしいケロヨンとコンチと、それからモンちゃんは、ケンヂらとクラスが違ったのか、最初のうちは親密さに少し差があった様子である。


 ケロヨンやケンヂたちが撃っている銀玉鉄砲は、私も遊んだ道具だが、何せ銀玉は撃つと行方不明になるし、見つかっても割れていることが多くて、買い足さないといけないので維持管理費がかかる。このため、私の遊び仲間では余り長続きしなかったような気がする。現代であれば、「目に当たると危険」ということで、絶対に売れないだろうな。

 それに、やれチャンバラだ、忍者だ、鉄砲ごっこだというのは、子供の遊びとしても幼い部類に入る。河合隼雄さんが著書の幾つかで述べておられるように、子供は思春期を迎える前に、一旦、それなりの人格形成を果たすのであれば、ケンヂも銀玉鉄砲を卒業したのかもしれない。もっとも彼の離脱は、単なる負けず嫌いのせいなのかもしれないが。

 
 ともあれケンヂは第17巻で「私は死にました」を10回唱えないと生き返らないというルールを一方的に破って、「正義は死なないのだ」と宣言して、死んだふりの遊びに決別する。彼のこの雄姿は、第17巻のカバーにもなっているし、「21世紀少年」でヴァーチャル・アトラクションから血まみれで無理やり戻ってくるときも再現されている。

 他方で、”ともだち”はどうだろうか。第1巻の56ページ目には、信者に対して「私は死にました」を10回、唱えるよう、教えを説いている”ともだち”が描かれている。

 つまり”ともだち”は、ケロヨンやケンヂたちの遊びのルールを知っているのだ。当時、参加していたか、こっそり見ていたかは分からないが、後者であれば、ここでも「ケンヂのまね」であり、卒業もしていないように見える。


(この稿おわり)