おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

20世紀戦争

長崎の雨  (第1115回)

前回の続きです。広島で友人と合流して山陽新幹線に乗り、博多で降りて最初に見物に出かけたのが大宰府の天満宮。今週の台風も含め、今年の九州や四国は集中豪雨で大変な被害にお遭いですが、この1982年7月の四国九州旅行も雨が多かった。 四国で野宿した夜…

近鉄と広島  (第1114回)

近鉄バファロウズのファンだった。田舎の野球小僧のころは、ご多聞に漏れず巨人ファンだったのだが、思春期にグレて近鉄に鞍替えした。いま覚えている理由らしい理由といえば、万年最下位クラスだったチームが、西本監督を迎えて、強くなり始めたころだった…

言いたいことは今のうちに  (第1110回)

先日、長いこと観よう観ようと思いながら、20年も経ってしまった映画「エネミー・オブ・アメリカ」をレンタルで観た。アメリカの外敵なんて、世界中にいるから珍しくも何ともないのだが、この映画のエネミーはそうではない。 原題は「Enemy of the State」、…

も一度やるなら7月だ  (第1109回)

戦争の話が続いたので、今回はのんびり映画鑑賞。アメリカ映画「SULLY」(2016年)、邦題は「ハドソン川の奇跡」。奇跡的であっても、奇跡ではない。監督はクリント・イーストウッド。主演はトム・ハンクスで、彼が乗るとアポロも飛行機も壊れる。 サリーち…

ながい旅  (第1108回)

先述のとおり、映画「明日への遺言」は、大岡昇平「ながい旅」(角川文庫)が原作です。エンディングのクレジットに、ちゃんとそう書いてあるし、いい場面を幾つも丁寧に拾っている。法学と仏教の難しいところは、適度に抑えている。 誰の何が「明日への遺言…

プラットホーム  (第1107回)

まだ続き。「静岡連隊物語」の柳田芙美緒さんが、岡田中将の逸話に詳しかったことの傍証みたいなものを挙げます。映画「明日への遺言」の原作「ながい旅」によれば、大岡昇平さんが、アメリカに持っていかれてしまったこの裁判記録が一般に公開されて、よう…

明日への遺言  (第1106回)

これは映画のタイトルです。筋は、原作である大岡昇平「ながい旅」をお読みいただくか、あらすじならネットにも結構、載っている。2008年公開の邦画。主人公は前回までにご紹介した岡田資元司令官。 主役が藤田まことで、妻を富司純子が演ずると聞いては、そ…

巣鴨プリズン  (第1105回)

前回の続きです。「静岡連隊物語」の一節、「帰還前後」の帰還後部分は、その前半が前回の話で、後半が今回の話題。戦争が終わってから二年〜三年後のことだ。急ぎの戦後処理が終わり、軍事裁判が始まった。東海軍もB級戦犯の容疑者を出す。 この箇所の柳田…

静岡連隊物語  (第1104回)

今回のタイトルは、新書の本の題名です。静岡新聞社編「静岡連隊物語 − 柳田芙美緒が書き残した戦争」。前回触れた別のブログのURLです。ご参考まで。 http://ameblo.jp/tinianisland/entry-12277822290.html 柳田さん(故人)は、静岡県焼津市のご出身で、…

正義の味方  (第1103回)

漫画「20世紀少年」では正義、未来、平和、自由、権利、理想といった難しい抽象概念をあらわす言葉を、子供たちが普通に使っている。これらは私たちが日常接していた漫画やアニメ、小説や映画に、ごく普通に出てきた。今もそうなのだろうか。どうも違う感じ…

シェルター  (第1098回)

この国でシェルターが売り切れになるとは、長生きするのも考えものだ。相応の工事が必要なもので一千万円台、エアコンの立派なものレベルで数十万円らしい。ご注文は切迫した様子らしく、されど製造販売が追いつかないそうだ。 それにしても、いまの日本にシ…

大統領令 バカの壁  (第1085回)

そんなに国民の安全を守りたいなら、世界中で通せんぼなんぞしとらんで、アメリカ国民の海外渡航を禁じればよい。実際に在外の米国民は危険にさらされているし、そもそもテロリストがここまで増殖した原因が、奈辺にありと思いきや。今回は申し訳ないが、い…

南洋諸島の夜空  (第1084回)

今月中旬(2017年1月半ば)、テニアン島に行ってまいりました。この旅費を捻出するのに、二年もかかった。戦没慰霊と保養および長男の就職祝いを兼ねて、当人も連れて行くという盛沢山の目的を果たすために、日程を伸ばしたので予算がかさんだ。しかし何とか…

太平洋  (第1083回)

しばらくの間、すっかり「20世紀少年」から離れて、昨年12月27日の日米両首脳ステートメントの話題を続けてきた。それも今回で一段落です。本日、アメリカの大統領が交代しました。世界はどうなるのか。 ずっと前に、ロサンゼルスで高齢の日系人男性お二人か…

Lida (第1082回)

こういうことを知らなかったというのもお粗末な話だが、このところ私が真珠湾攻撃と書いている一連の作戦行動において、攻撃した敵地は真珠湾だけではないそうだ。 同じ島内だが、距離にしてホノルルから20キロぐらいあるのだろうか、カネオヘという地名があ…

誰もがするようなこと  (第1081回)

変なタイトルですが、単なる思わせぶりです。ここでアメリカ側の話題を中心的に出しているのは、真珠湾の攻撃についての我が国の資料が、当たり前かもしれないけれど、殆ど日本側の詳細を語るものばかりだからだ。 これはお互い様のようなもので、いま滞在中…

炎とたたかう人たち (1080回)

真珠湾の話の続きです。長い。最初の挨拶が終わってから、オバマ大統領の演説は外交から離れ、戦場を主な舞台とする真珠湾列伝のようなものになっている。 その日、ものを言ったのは軍服を飾る階級章ではなかった。大統領は言及していないが、民族でもなかっ…

泣きやまぬ海  (第1079回)

引き続き、日米首脳ステートメントの感想文という変わった趣向でございます。前回は、わが総理のスピーチに多少の注文を付けたあとで、何となく後味が悪い思いをしたため、今回はできるだけ穏やかに出直します。二人とも避けて通れない話題があって、その取…

日曜日の朝  (第1078回)

前回の続きを始めるにあたり、両政府のサイトなどには、当日の催し物や講演内容が掲載されているので、ご参考までそのうちの幾つかを記録に残しましょう。(1) 外務省 「安倍総理大臣のハワイ訪問」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page3_001940.h…

ハワイの波、静か  (第1077回)

謹賀新年。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。今月(2017年1月)、ようやく伯父の戦没地テニアン島に慰霊の旅行に出かける準備も整いつつあり、そのために戦争関係の本を読みながら年末年始を過ごした。同種の報道も気になる。 そのうち一つの感想文を…

パティ・スミスのインタビュー記事  ”HOW DOES IT FEEL”  (第1076回)

1946年12月30日、渦巻くような激しい吹雪の中、シカゴの町で私は生まれました。陣痛の母を連れてタクシーを呼んだ父は、車の窓を開け放したまま、運転手に湖畔通りの道案内をする羽目になりました。私は弱々しい赤ん坊で、父は生まれたばかり子の呼吸が止ま…

風と雨の詩  (第1075回)

これは漫画と映画の感想文サイトなのだが、最近、妙なところに力が入っている。ボブ・ディランの「風に吹かれて」や「激しい雨が降る」の歌詞を読んでいて、生物や気象や地理で使う言葉が本当によく出てくるなあと思った。 ブルースやカントリーの本場だけあ…

歌い出す前から よく知っていた歌  (第1074回)

前回からの続きです。のちにパティ・スミスが「ニューヨーカー誌」の取材に応えたところでは、最初にノーベル・アカデミーから来た打診は、誰か言えないが文学賞受賞者の代りに歌ってくれというものだったらしい。そこで彼女は自分の曲を歌うつもりでいたと…

パンクの女王  (第1073回)

パティ・スミスの顔と名前だけなら、四十年以上も前から知っている。デビュー・アルバム「ホーセス」のジャケット写真。白いブラウスの肩に上着を掛けた立ち姿。確かラジオで彼女の歌を聴き、「これは、ついていけない」とあっさり諦めた私。1970年代の半ば…

遣米使  (第1065回)

いつの日か慰霊のため、伯父が戦死したテニアン島に行くのだと書いたが、ようやく時間とお金の工面もできて、来年の1月に参ることになりました。このテニアンほか、近くのサイパンやロタといった島々からなる北マリアナ連邦は、アメリカ合衆国の「自治領」と…

故郷にB29が墜ちた六月  (第939回)

漫画の感想文らしくない記事が続く。自分で散々書いてきて、今更こういうのも何だけれど疲れて来た。書いたり考えたりするのに疲れたのではない。時勢に遅れを取らぬよう最近の政治の記事をネットや報道で追いかけて来たのだが、ネットのニュースに追記され…

珊瑚礁の大砲  (938回)

今回は漫画と全く関係ない。ネットにも報道にも戦争という言葉があふれているので昔話を思い出し、書き留めておきたくなった。三十代から四十代にかけて海外に駐在、出張、旅行する機会が多く、その殆どがアジアとオセアニアであった。先々で遠い昔のことと…

ブーゲンビリアの花咲く南の島へ  (20世紀少年 第900回)

今回はかなり論調が攻撃的というか乱暴というか、素敵な読後感など全く保証できないがせっかくの900回記念なので自分のために書く。最初にお断わりしておくと、私は5年ほど楽しく働いたり遊んだりした国とあって、アメリカは一番好きな外国だが、もちろん何…

Q: そもそも、なぜ今ごろ「20世紀少年」の感想文なのか                               (20世紀少年 第6回)

A: 私が時代遅れだからです。 手元の単行本「20世紀少年」第1巻によると、週刊ビッグコミック・スピリッツ誌上で連載が始まったのは、1999年第44号からとある。私はその前年から、当時の勤務先の駐在員としてカンボジアに長期滞在していたので、長年の浦沢…