おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

憲法と社会 (2016年~2022年の過去記事の再掲)

裁判所の思い出  (第1231回)

変なタイトルしか思い浮かばなかった。仕方がない。今回は第32条。基本的人権の一つ、裁判所に訴える権利。現行法と改正草案は、次のとおり。【現行憲法】 第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。 【改正草案】 (裁判を受ける権…

正義の観念とは合致しないこと  (第1230回)

第31条から再開します。この先、「取り調べ」「お白洲」「監獄」に関する条項が異様に多いのは、警察国家時代の日本の特高や、ドイツのゲシュタポがやらかしたことへの反省と警告が含まれているからだろう。その劈頭にある第31条について、改正草案は「適正…

法治国家と警察国家  (第1299回)

第30条の納税のところまで進んでから、しばらくの間、別の話題を取り上げたり、空白の時期があったりで間が空きました。第31条から第40条まで、言い換えると憲法の第三章「国民の権利及び義務」の最後の部分をこれから始めるにあたり、本日は準備運動的に、…

半月ほど休みます  (第1298回)

今月は公私ともに多忙なため、このサイトの更新を半月ほどの見込みで休みます。内容としては、勤労の関係が一区切りつき、これから刑事事件や裁判について、すなわち権利に関する最後のグループという段階です。 昨日(2017年1月5日)の党の「仕事始め」で、…

新春ご挨拶  (第1297回)

【追記】 このブログのカテゴリー「憲法と社会」は、2016年から書き始めた別のブログを一本化するために、そのまま再掲しています。今回の新春とは2017年の正月のことです。 新年あけましておめでとうございます。ここにお立ち寄りになられた皆様におかれて…

備忘録  (第1296回)

今回は資料整理です。第三章の「国民の権利及び義務」について調べている間に見つけたサイトなどを、忘れぬうちに並べておく。今はまだ現在の憲法を読んでいる最中なので、これらを検討するのは先々のことだ。アメリカと日本の国会(与党だけではない)の資…

チャーチルの民主主義  (第1295回)

過去二回、金の話に目がくらんで、文章が荒れました。今回は憲法の本文から離れて、できるだけ静かに周辺の話題を拾います。憲法には国民主権という言葉や、主権が国民にある旨の表現が何か所かあるのだが、民主主義という言葉が出てこない。この両者は同じ…

黙って年貢を納めている場合かどうか  (第1294回)

古い話から始める。もう教科書に載っているらしいのだが、1980年代後半のバブル景気。あの時期に、一番儲かったのは誰だろうという推測から入る。ほとんど追加で勤労する必要もなくして、大儲けしたのは間違いなく国と地方公共団体である。所得や売上に課さ…

私有財産と金融資産課税のこと  (第1293回)

本題に入る前に、本日は天皇誕生日です。おめでとうございます。4か月前、私は8月の「お言葉」の放映を観て、一代限りでよいから皇室典範の改正のための特別法を作るのがよいと書きました。結果的に、事態は同じような方向に進んでいるかに見えますが不本意…

働くことの権利と働くことの義務  【後半】  (第1292回)

前回、失業保険のところが妙に詳しくなったのは、この制度にお世話になったことがあるからです。もう十年ほど前になるが、約8か月、完全に失業した。その期間のうち、半分以上は雇用保険から生活費の補助を受けている。手当の受給資格とその金額・期間は、ご…

働くことの権利と働くことの義務  【前半】  (第1291回)

勤労という言葉は、やや堅苦しく古めかしく感じるため、ここでは主に、勝手ながら「働く」ことと言い換えます。前回の私見のとおり、これは賃金労働だけではなく、農作業も社長もフリーランスも、家事・育児・介護も、民生委員や町内会長のお務めも含むはず…

勤労感謝  (第1290回)

義務教育のことは、小学生のころから知っていたと思う。一方で、勤労の義務と権利については、いつ知ったか記憶がなく、それにしても「変なの」と感じた覚えがある。働くのは当たり前であり、権利だ義務だと憲法に書いてあるのが不思議だった。小さいころか…

第26条および第27条の権利と義務  (第1289回)

今回は何だか法律書みたいな堅苦しいタイトルになっておりますけれども、どちらかと言えば最近がんばりすぎた私のペースを調整する回。第26条の教育と、第27条の勤労について、ひさしぶりに英語版を読んでみたり、共通点を探ってみたりしたくなった。まず、…

ミニ憲法  (第1288回)

前回、司馬遼太郎の明治維新は教育の成果であるというような考えに触れました。江戸時代は、各藩が競って藩校を作り、あるいは寺子屋を建て、しばしば当時の世界中で屈指の識字率であったという話を聞く。もっとも、これは江戸の知識者階級の男だけの統計と…

教育に参加したい国家  (第1287回)

ようやく第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」に関する箇所を終えた。マズローの欲求5段階説によれば、生理的な欲求や安全の欲求が満たされると、人は次に所属の欲求や、承認の欲求の段階を志向するらしい。ということで、第26条が教育、第27条が勤労…

ようやく四分の一  (第1286回)

今回で第25条グループを終える。いまの憲法は103か条あるから、前文を加えると、ちょうど四分の一の条数をみたことになる。こんなに手間暇かかかるとは思わなかった。しかも、これに続く第26条と第27条には、教育および勤労の権利・義務という大物が待ってい…

ある文民警察官の死  【後半】  (第1285回)

前回の続き。以下は、その5月4日の出来事に焦点をあてる。車での移動が必要な遠隔の町で、現地の関係者を集めての会議があった。郄田さんを含む文民警察隊は、十人みんなで参加することになった。彼らの基地はタイ国境がある北西部の端っこ、バンティアイミ…

ある文民警察官の死  【前半】  (第1284回)

1993年は個人的に忙しかった年で、自宅の引越し、うちの子の誕生、私の転職と続いたから、世の中の動きはあまり覚えていない。でも逆に、子供が生まれた年と関係づけて覚えていることも幾つかある。サッカーJリーグの始まり。皇太子ご夫妻のご成婚。そして自…

PKO「UNTAC」とその後のカンボジア  (第1283回)

国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations:国連PKO)には,はっきりとした定義は存在していません。なぜなら,国連PKOは,国連憲章で想定されている「国際の平和及び安全の維持又は回復」のための措置(集団安全保障制度)が,戦後の東西…

PKOの基礎の勉強  【後半】  (第1282回)

水木しげるさんの戦争漫画(今日の日付、12月8日で始まった戦争)のどれかに、水浴中でも身元が分かる木の札を、首から下げていたというエピソードが出できたように思う。爆弾で体が粉みじんになったとき、戦死者が誰か識別するためだ。誰かが生き残れば、何…

PKOの基礎の勉強  【前半】  (第1281回)

まず前回の最終部分の再確認です。防衛白書において、いわゆる「駆け付け警護」が実施される前提条件は、(1)参加5原則が満たされており、かつ、(2)派遣先国及び紛争当事者の受入れ同意が、国連の活動及びわが国の業務が行われる期間を通じて安定的に維…

解釈  (第1280回)

一般に解釈という作業は、受け取った情報を受け手の側が、自分の言葉なり感じ方なりに置き換える行為だろう。よく使うのは芸術の分野で、文学や絵画や詩歌などのジャンルでよくきく。また、難しい文書や外国語を理解するにあたり、解釈がおこなれる。 法解釈…

いわゆる「駆け付け警護」  (第1279回)

改正草案の第25条の3が、第9条と関係しているはずというのは、単なる思い付きではない。草案の該当部分を並べてみます。(在外国民の保護) 第二十五条の三 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。 第九条の二 …

カナダとキューバ  (第1278回)

湾岸戦争でクウェートに一兆円を超える資金援助をしたのに、アメリカの新聞に載った同国の支援国に対する感謝状には、日本国の名が無かった。これは、通常、金は出しても血を流さなかったからだと解説されている。クウェートがそう公式発表したという記録の…

駆け付け三杯  (第1277回)

こういうタイトルを掲げただけで、不謹慎と言われるような日が来たら恐ろしい。昔から楽しく使っていた表現が、不自由になることが近年多いが、悪いのはその言葉ではなく、その言葉が表す対象でもなく、それを使う人間の悪意、またはそれを疑う者が偏狭であ…

環境権などの新しい人権  (第1276回)

掲題は、先般始まった参議院の憲法審査会でも出た言葉です。それほど新しいわけではなく、憲法を骨董品扱いにする人たちには新しいのかもしれないが、前からある概念である。何回か言及してきた当家にある本、「図説でわかる憲法問題」にも、プライバシー権…

新三役  (第1275回)

第25条のあとに、改正草案は三つの新設条項を加えております。もともとは、今の憲法だけ読むつもりで始めたのだが、どうにも政局に勉強をせかされており、改正草案もちゃんと目を通しておかなくてはいけない。まずは、現憲法の第25条を再掲する。 【現行憲法…

三島の檄  (第1274回)

明日は11月25日。1970年のこの日、三島由紀夫が自衛隊の建物の中で割腹自殺した。当時の私は10歳であったが、実家は朝の7時と夕方の7時に、一家でテレビのニュースをみるのを日課としていたため、この騒動のことを子供だったにしてはよく覚えている。もちろ…

うまい話には裏がある  (第1273回)

前回の第25条第2項の続きです。今回は題に「うまい話には裏がある」と書いた。国は少なくとも努力をしてはくれるらしいが、段々と冷たくなってきている点、年金や介護保険に詳しい方はよくご存じのことと思う。それよりも当方と致しましては、現在、不気味に…

第111位から更に下がる可能性  (第1272回)

ようやく第24条の検討も、最後の回を迎えている。本日は現行第24条第2項と、改正草案の同第3項の比較。 【現行憲法】配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等…