おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

「20世紀少年」を読む

迎え火  (第950回)

今日も漫画とは殆ど関係ございません。最近は妙に昔のこと、特に子供時代のことを思い出すようになった。無事お迎えの時が近づいているのかもしれない。昨日、実家のことを書いていたときに連想したことを書き残そう。 小学生のころ、1960年代の田舎、うちの…

戦争を知らない中高年  (第949回)

司馬遼太郎は複数の著作において、中庸・中道というものは観念としては成り立ちやすいが、そのとおり実行するのは難しいという趣旨のことを書いている。また、別の機会に引用した覚えのある「街道をゆく43」には、こんな文章がある。 古代ギリシャの哲学者は…

御巣鷹山の手帳  (第948回)

覚えていらっしゃる方もいるのではないかと思う。もう10年ぐらい前だったか、私が若手社員だったころの8月12日に日航機が墜落し、その遺品を展示する会があった。この場には行けなかったのだが、展示品の一部を伝える新聞記事を読んだ記憶がある。 そのうち…

怪談噺  (第947回)

漫画「20世紀少年」で幽霊や、オバケが散々話題になっているのだが、考えてみれば今どきの若者には余り実感の湧かない話題ではないのだろうか。ああいう古典的、伝統的なオバケ、幽霊の類は最近とんと登場しないではないか。幽霊はどこへ行った? 幽霊という…

Initiation Love  (第946回)

乾くるみ著「イニシエーション・ラブ」は、はたして恋愛小説なのかミステリなのか知らないが、いずれにしても滅多に私はこの手の本を読まない。しかし、今回は親類にぜひと勧められたので本日(この下書きを書いた日に)読みました。漫画の感想文とは関係な…

The Cassandra Crossing  (第945回)

今日は映画「カサンドラ・クロス」が材料。英語の題名は上記のとおり、「クロス」ではなくて「クロッシング」になっている。十字路の悪魔とか、矢切の渡しとかのような、道路や鉄道や河川などが交差する場所をいう。映画は1970年代の作品で、先日たまたま観…

Dreams  (第944回)

前回のイチャモン大会において、「slumbers」は複数であるべしと述べたが、そこまで徹底されていないものの「dream」も複数形で用いられることが多い。夢には二義性があると以前書いたが、儚い夢のほうが複数形であるのは不思議ではないとしても、寝ている間…

Golden Slumbers  (第943回)

今回は小説の感想文のごときもの。雑文です。筋は追わないが、やはり要所には触れるので、まだ小説を読んでいない人や映画を観ていない人は読むのを避けてくださったほうが良いと思います。2007年に出版された伊坂幸太郎著「ゴールデンスランバー」である。…

 海  (第942回)

今日は漫画と無関係に夏便り。近年の唯一の娯楽は、南の海で泳いだり釣りをしたりすることだ。そのために他の遊びには殆ど金を使えないが構わない。先般、ようやく夏休みが取れました。 私はダイビングはやらないし、シュノーケリングもほとんど経験がない。…

 夏  (第941回)

第何集か忘れたが、ケンジ少年が縁側でスイカを食い、口から庭先に行儀悪く吹き飛ばしている種に希望を託して、「これでスイカ食い放題です」と苦手の夏休みの日記に書き残したシーンが出てくる。だがスイカは育たなかった。 私もガキんちょのころ、同じよう…

 雨  (第940回)

たまには穏やかな話題を。関東は梅雨です。私の写真はほとんどが花や魚。正岡子規と同じ「博物好き」である。「自然」という単語は、英語のナチュラルの訳なのだろうか? どちらも母なる大自然のほうの意味と、アローン・アゲインのように「自然とこうなる」…

Alone Again  (第937回)

手書きで1991年と編集した年月日まで書いてあるカセット・テープが手元に二つ残っている。サンフランシスコで暮らしていた当時に持っていたカセットやCDから、気に入りの曲を集めたもので片方がハード・ロック、もう一方がスロー・バラードで、後者の一曲目…

フォークの時代 (936回)

先日、新橋のガード下を歩いていたら、道沿いの居酒屋の入り口から、井上陽水の「傘がない」が大音響で流れてきた。いきなり冒頭のあの歌詞とは恐れ入るが、私や少し上の世代を呼び込もうという戦術であろう。曲を忘れたが、隣の店も負けじと同時代のフォー…

ロックの時代  (第935回)

60年代はロックの時代であったとケンヂおじちゃんは姪のカンナに言い残した。その根拠はあまり詳しく説明されていないが、この時代の象徴的な出来事としてウッドストック・フェスティバルが語り継がれ、再現されることになる。他方で私にとって60年代の世界…

富士山はいつの間にやら活火山  (第934回)

少し日が経ってしまったが、かつて5月27日は海軍記念日だった。日付は日本海海戦に由来するのだが、興味が湧くのは敵将ネボガドフが降伏し相手の艦隊が実質的に壊滅したのは、翌28日のことである。誰も異存がないほどに初日で決着がついたらしい。 この27日…

貧乏  (第943回)

私がここで貧乏だった子供時代のことを平気で書けるのは、その程度の貧乏で済んだからだ。もっと貧しかったら、または、今も同じくらい貧しかったら、オッチョの表現を借りると、「懐かしくも何ともないね」という心境になって話せなくなってしまうだろう。 …

地球防衛軍  (第942回)

今回は真面目に漫画の感想文に戻る。先日、心理学の本を読んでいたら、わずかながら「おたく」の話題が出て来た。語源は「御宅」で、こちらは古い映画を観ていると普通に出てくる。かつての「おたく」たちは、そう呼び合っていたらしいのでこの名が付いたと…

びんぜつふじん  (第941回)

日活が来年を目途に、ロマン・ポルノ・シリーズの制作を再開するとの報に接し、近年まれにみる快事、太平の眠りを破る朗報、まこと欣快の至りである。私も久しぶりに映画館に行きたくなってきた。あれは自宅のディスプレイにて、こそこそ観るべきものに非ず…

ヴァーチャル・リアリティー  (第940回)

最初におまけ。先日、浦沢さんと庵野さんの生年が私と同じという話題を出したときに一つ書き忘れた。こちらは作者における共通点ではなく、エヴァと20世紀少年という作品における共通点。2015年である。 これに気づいたところで、なぜ2015年なのかという頭痛…

宇宙飛行  (第939回)

本日はかつて好きだった天文に関する雑談です。先日のニュースで、わが国は3年以内に月面着陸の宇宙船を飛ばす計画であり、また、日帰りの宇宙旅行も早ければ本年内に開始するのだという。後者は弾道飛行というもので、放物線を描いて落ちてくる。これは飛行…

既視感  (938回)

既視感のことを、昔は英語でデジャヴと呼んだ。近ごろは本家フランス語読みで「デジャ・ヴュ」と書いてあることが多くなった。いま見ている光景を、かつてそっくり同じように見たという不思議な感覚である。何やら記憶や夢と関係がありそうだが、そのメカニ…

あのバンド  (第937回)

話題はケンヂたちのバンドである。名前は今もない。生放送の事故で追い出されたときは、ボーカル兼ギタリストの別名から採ったのか「バカバンド」と呼ばれていたが、まさかこれが本当のバンド名ではあるまい。宮本武蔵の漫画名と少し似ている。映画ではポス…

商店街の寄り合い  (936回)

米国の「ローリング・ストーン」誌はランキングを作るのが好きらしく、いろんなジャンルを拵えては毎年のように、ベストは何だった、この作品は何位だったと順番を付けて発表しては商品にしている。ネット時代が来て、昔のヒット作も振り返ることが出来るよ…

星の王子さまが幸せならば  (935回)

最後にもう一度、終幕の屋上のことを考えてみたい。その前に、第22集から「21世紀少年」にかけて描かれているバッヂ騒動の顛末をもういっぺん振り返る。最初にお面の少年が当たり券を持ってバッヂを持ち出し、これを少し陰のある表情で見ていたケンヂが、は…

日本の一番長い夏の日  (第934回)

2015年はカツマタ君の世界大統領就任の年であることから、カツマタ君特集を連載中。今日は特にマニアック。彼の名は主に幽霊としてだが、何回か物語の冒頭から中盤にかけて出てくる。ドンキーの葬式が初出。次に第11集で山根がカツマタ君の幽霊と夜の理科室…

東京行きの物語  (第933回)

前回の続き。後半の21世紀ケンヂは口数の少ない偏屈なおっさんとなって再登場する。その彼が北海道から東京への旅の途中で、珍しく過去を語るシーンが三回ほどある。相手の一人は、諸星さんの仇で、関東軍の総統に落ちぶれている長髪男であった。第19集。訊…

ずっと  (第932回)

これから4回に分けて、以前、先送りにした諸問題をもう一回、考える。連休中に下書きしました。いつもどおりの言い訳で始まるが、現時点で回答を出せる自信はないし、出しても正解かどうかは分からない。でも再考すると宣言した以上は守る。とはいえ一度に何…

ノストラダムス  (第931回)

連続して真面目なことを書いたので疲れた。せっかくの連休。休まなくては。今日から元のグータラ・ブログに戻る。お題は「よげん」にする。先日、新聞記事を読んでいたら、以前の小欄でも触れたように、オウムの被害者と信者を取材して本を出版した村上春樹…

神様の翼  (第930回)

その昔、メール友達というのが流行った。私が使っていたサイトは怪しげなものではなく(すでに怪しげなものもあった)、大昔でいうと子供向けの雑誌などの最後のほうに、「文通しましょう」という欄があったのと似たようなものである。2000年代の初めの一時…

Constitution  (第929回)

R.E.M.が前回の曲をマンドリン演奏で歌っていたころ、私はベイエリアやSF空港を見下ろすサンフランシスコ郊外の丘の上に住んでいた。ある日、大家さんから夕食のご招待があってお邪魔すると、幼稚園児の娘さんに紹介された。共通の話題がない。やむなく、話…