おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

関東軍 (20世紀少年 第610回)

かつて、日本史の教科書に現代史がたったの2ページしかないとサナエがオッチョに文句を言っていた。コイズミは日本史の自由研究にヒトラーを選んだが先生に峻拒され、あわてて選び直したのが血の大みそかのテロリスト、「ケンヂ一派」であった。 このとき彼…

素敵なおまわりさん (20世紀少年 第609回)

神様がコイズミを発掘して夢と希望を取り戻したころ、北の方ではバイクを降りて転がしながら歩くケンヂと、自転車を転がす将平君が、少しさびれた繁華街のようなところにたどり着いている。どうやら立ち並ぶ看板を見る限り、ここは商店街ではなく歓楽街のよ…

レーンに舞い降りた女神 (20世紀少年 第608回)

第19集第2話の「どデカいものがやってくる」は、神様の「おい、俺っとこはいつからお前らの隠れ家になったんだよ」というボヤキから始まり、同じく神様による今日のタイトルどおりのセリフで終わる。神様の不機嫌にお構いなく、春波夫さんは「お世話になりま…

マス大山 【後半】 (20世紀少年 第607回)

空手を全く知らないのに2回分の文量になったのは、もう一つ、大山倍達の話題があるからです。一昨年、ベストセラーになったドキュメンタリー、増田俊也著「木村正彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」という本がある。渾身の力作とは、こういうものを指す。 …

マス大山 【前半】 (20世紀少年 第606回)

二人して焼き魚を美味い美味いと食いながら、将平君は余ほどケンヂの身の上が気になるらしく、「今までどこにいたんですか?」と訊いている。相手の返事は「フラフラしてた」と質問にきちんと答えていないため、今一度、「どこを?」と尋ねたところ、「日本…

釣り (20世紀少年 第605回)

第18集の13ページ、物語はオッチョやカンナから離れて、ケンヂと蝶野元巡査長のロード・ムービーに切り替わる。蝶野元巡査長とは、呼び名として長すぎるな。蝶野では可哀そうだし(「登場少年紹介」は蝶野と呼び捨てにしているが)、当面は将平君にしますか…

さよならぼくのともだち (20世紀少年 第604回)

第19集に入ります。この巻は最初と最後のごく一部を除けば、ケンヂによる関東軍の関所破りの一幕である。オッチョとカンナ同様、ここでケンヂも多くの実に良くねえ絶望を見る。冒険物の劇中劇と見るならば、ショーグンに角田氏がいたごとく、ケンヂには蝶野…

フクベエだったら (20世紀少年 第603回)

今回で第18集は終わりです。表紙にケンヂの顔が大書されているように、主人公が本格的に再登場する巻なのだが、会話が多くて活劇が少ないこともあり、アクション物が好きな読者には物足りないかもしれないが、話題は大事なものが多い。その最たるものがこれ…

急ごしらえのシェルター (20世紀少年 第602回)

第18集の197ページ、仲間を返してと迫るカンナだが、万丈目は動じない。彼の解説によると、「君の仲間を連行したのは我々ではない。地球防衛軍だよ。」であり、「私が統率しているのは親友隊だ。だが安心したまえ、彼らの取り締まりはとちらの管轄だ」そうだ…

超人 (20世紀少年 第601回)

第18集第10話の「知ってはいけないもの」は、初期のサークル活動において、ステージに立っている”ともだち”の「僕達は超人になれるんだ。」というご宣託から始まっている。「知ってはいけないもの」の正体は、最後のほうで万丈目が語る予定。 私はいま故あっ…

例の計画 (20世紀少年 第600回)

第600回記念にこの話題が来たか。因果なものだ。第18集の174ページ目、万丈目エンタープライセスの来客用テーブルに、ナショナル・キッドと忍者ハットリくんのセルロイドのお面、そして万丈目にとっては初めて見るものだったはずだが、オッチョ考案のマーク…

長い話の始まり (20世紀少年 第599回)

ずっと前にも書いたような覚えがあるが、初めて好きになったスポーツは大相撲で、幼稚園児のころから祖父と一緒に毎日テレビ観戦するのが楽しみであった。記憶では当時の横綱は大鵬、柏戸、佐田の山の3人。大関は玉乃島や北の富士や琴桜など。 大鵬は力士と…

児童A (20世紀少年 第598回)

少し前のページに戻ります。第18集138ページ目で、コンチが指さしているビートルズのアルバムの両脇にあるジャケットのことだ。向かって右はおそらくニール・ヤングの代表作の一つ、「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」だろう。 向かって左側を知らない古い…

ローラーゲーム (20世紀少年 第597回)

第18集第9話の「見てはいけないもの」はテレビ局が舞台となって、進行役はアシスタント・プロデューサー(AP)の青年、登場少年は春波夫さんとマルオである。このTTVというテレビ局は外観からすると後にカンナやコンチが乗っ取ったテレビ局とは違うようだ。 AP…

本官 (20世紀少年 第596回)

初めて観た大島渚監督の映画は、たぶん学生時代の文化祭で「日本の夜と霧」だったと思う。白昼の報道で「愛のコリーダ」の内容と裁判沙汰を取り上げ辛いというのもあるだろうが、「戦場のメリークリスマス」が代表作の筆頭に挙げられたりすると、年配のファ…

DJの回想 (20世紀少年 第595回)

去年の暮れの紅白で、美輪明宏が「ヨイトマケの唄」を歌って、若い人の間でも評判になっているらしい。あの歌が流行ったころ僕らは小学生で、よくふざけて冒頭の部分を合唱したものである。周囲の大人もよく歌っていたが、ふざけていたのかどうか知らない。…

あの四人組 (20世紀少年 第594回)

この感想文は感想文であるが故に、物語の本筋から細部に至るまで、場合によっては最後のほうの出来事にも触れる。特に今回はその度合いが大きいので、まだ漫画を読んでみえない方や、映画をご覧になっていない方はご注意願います。 謎のDJと紹介されていた男…

フクベエの場合 (20世紀少年 第593回)

前回に続く。「ノックスの十戒」を再掲します(長いので一部省略)。 その1。犯人は物語の序盤において言及されなければならない。 その2。解決のため超能力や異常な能力を持ち出すのは論外である。 その3。隠し部屋あるいは秘密の通路を用いるのは一つ限…

Ten Commandment of Detection (20世紀少年 第592回)

今回と次回は脱線します。昨年、我が家の新聞に、「ノックスの十戒」が紹介されていた。ミステリのファンならば先刻ご承知の伝統的な推理小説の規則集である。1920年代にイギリス人の小説家にしてシャーロキアンのロナルド・レックスという御仁が、推理小説…

レイター、アリゲーター (20世紀少年 第591回)

今回はSF関係の雑談から始めます。英語の挨拶にもいろんな表現があり、例えば、'' See you, later'' で「また会おう」、返事の '' In a while '' が「そのうちな」といった調子である。 1950年代の Rock&Roll 作品の一つに、「カエルが鳴くから帰ろ」と同じ…

刑務所から出て来た男 賭けには強い女 物覚えの悪い奴 (20世紀少年 第590回)

カンナのアジトでは氷の女王一派と呼ばれている男たちが、火薬や銃の整備をしている。第18集第5話のタイトル「みんな、集まって」とは、ビルの屋上でケンヂの歌を聴いたカンナが、その場に降りて来てかけた最後の招集の言葉だった。話たいことがあるとカンナ…

あなたが生きている今日は (20世紀少年 第589回)

すこし話が前後するのだが、オッチョとカンナが口論しているシーンの少しあと、第5話「みんな集まって」に数ページの風変わりな屋内風景が描かれている。その男は巻頭の「登場少年紹介」に「謎のDJ」と掲載されている人物で、「ラジオでケンヂの歌を流し続け…

命が危ないと思ったら (20世紀少年 第588回)

第18集の58ページ目。カンナの口から王曉鋒とチャイポンの最期を聴かされたオッチョは無言のまま立ち尽くしている。カンナはみんなが自分にワクチンを打たせるために大芝居を演じたといいながらも、本当は自分は打ちたかった、「あたしは自分一人だけ生きた…

チャイポン (20世紀少年 第587回)

王曉鋒が比較的、地味で短い登場ぶりながら、最後に閃光を放つような去り方をしたのと比べると、チャイポンは早くも第4巻で派手に登場し、間もなく静かにその生を終わろうとしている。登場したころのチャイポンは、バンコクの暗黒街のボスであった。人殺しに…

王曉鋒 (20世紀少年 第586回)

カンナの話は、ともだち暦元年の「鳳城樓」という中華料理店らしき建物の中の出来事から始まる。カンナはここに、中国とタイのマフィアから連名で招待を受けてやってきた。「龍虎」とかかれた掛け軸を背中に、中華料理ではお馴染みの回転円卓に座った王曉鋒…

一所懸命 (20世紀少年 第585回)

第18集の34ページ目、オッチョはカンナに、なぜ武装蜂起は8月20日なのかと尋ねている。カンナの返事は、ケンヂおじちゃんの誕生日だからというものだった。誰かの誕生日に事を起こすという習慣なり歴史的事実があったかどうか、思い出そうとしたが何も思い浮…

カレーの匂い (20世紀少年 第584回)

第17集の61ページ目にサナエとカツオの姉弟がちょいと出てくる。サナエが前でリヤカーを引き、カツオが後ろから押している。サナエは中川先輩やカンナから教わった歌を歌っている。 カツオは前と違うテレビを持って帰ったら怒られるかなとか、グレート・アン…

Reborn to Be Wild (20世紀少年 第583回)

第17集の129ページ目、北方検問所は、同時に二つの敵対集団の行動に直面してしまいピンチを迎えている。まず一方は大勢の侵入者である。他方は村人の反乱であるが、いずれも同じ曲に触発された集団行動であることが興味深い。 どうして「グータララ、スーダ…

歌、歌ってるやつを撃つな (20世紀少年 第582回)

第18集の112ページ目でケンヂは立ち上がった。左記のごとく私がページに「目」をつけるときは、ページ番号が印刷されていない場合。かつての漫画はページの上下にも左右にも余白が多かった。今は少ない。「20世紀少年」も少ない。だから、単行本を上下や横か…

立つんだジョー (20世紀少年 第581回)

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。新年初回の登場人物は、やはりケンヂを措いて他になし。 第18集の86ページ。田辺家に拡声器を向けて副官は、「宇宙人に告ぐ。おまえは完全に包囲されている。おとなしく武器を捨て…