おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

万丈目の不調 (20世紀少年 第365回)

”ともだち”の訃報に接したときの、幹部連中の様子は殆ど描かれていない。見たくもないけれど。唯一、ある程度、その動揺振りが紹介されているのが万丈目です。 彼より先に知ったのは友民党でナンバー2の席にいる幹事長の小向であったようだが、電話を取り次…

これで終わりか? (20世紀少年 第364回)

テレビが”ともだち”の心肺停止を伝えたとき、ヨシツネの秘密基地には、かつてない人数、顔ぶれが出そろっている。ヨシツネとユキジと隊員たちに加えて、オッチョとマルオと角田氏、コイズミもカンナもいる。「死んだってことか?」とヨシツネ、「たぶんな」…

再会の二乗  (20世紀少年 第363回)

第13巻の13ページ目、警視庁のパトカーが2台、小学校の前に横付けにされている。警官は既に集まり始めた野次馬に手を焼いている様子。正月の未明というのに、ご近所なのか、初詣客であろうか。警察はトランシーバーを使っていて、「半径300メートル立ち入り…

忍者ハットリくんのお面 【後半】 (20世紀少年 第362回)

第13巻第1話の「記憶にいない男」は、例の合成写真に悪用されたスナップ・ショットの撮影場面から始まる。この交差点の場所が分からない。新宿や渋谷には多くのスクランブル交差点があるが、このような横断歩道は見た覚えがない。グーグルの航空写真でも調べ…

忍者ハットリくんのお面 【前半】 (20世紀少年 第361回)

大型連休に岐阜まで旅行に出かけ、親戚の車で白川郷に連れて行ってもらいました。飛騨国の山奥にあり、北の峠を越えれば富山県である。地図でまっすぐ北方面に目を向けると、能登半島の付け根に氷見という響きの良い地名がある。 この氷見市とJR西日本の両サ…

no woman no cry   (20世紀少年 第360回)

一人目の”ともだち”も無事、滅びたことだし、今回は思いっきり脱線します。私は全く感傷的な人間ではないが、どうしてもこの曲だけは聴くたびに泣きそうになるという歌が一つだけある。その題名が今回のタイトル。唄っているのは1970年代、満天下にレゲエの…

ひみつ集会のおわり  (20世紀少年 第359回)

銃撃のあと山根はどうするつもりだったのだろう。確かに標的は倒れたが、死んだかどうか確認することもなく、目撃者のオッチョと角田氏には目もくれずに、「これで終わったよ」と言って理科室から立ち去った。何が終わったのか。彼と”ともだち”の関係が終わ…

銃声 (20世紀少年 第358回)

第12巻168ページ目、春さんと携帯電話で話ながら懐かしの小学校前まで歩いてきたマルオは、校庭に人影を見た。若い女性。近寄ろうとした矢先に、彼は「パンッ」という音を聞いた。どこで聞き知ったか、「銃声?」と言っている。 彼の目の前にいたカンナは、…

話はもうおしまいだ   (20世紀少年 第357回)

どうもここ数回、このブログは感想文というよりも我流の解説文のようになってしまっていて、正直なところ表現・内容ともに躍動感やユーモアに欠ける。手に汗握るような戦闘や冒険の場面ではないので仕方がないのだが...。しかしながら今回も、まだもう少し”…

お前は誰だ (20世紀少年 第356回)

第12巻の第11話「銃声の正体」。理科室の入り口に立った忍者ハットリくんのお面を付けた男に対し、「お前は、誰だ」とオッチョは言った。山根は平然としている。読者もこのお面姿を、1997年の「ともだちコンサート」と2000年の「血の大みそか」の夜に見て知…

ともだちの顔 (20世紀少年 第355回)

第12巻第12話の「ともだちの顔」の冒頭シーンは、第8巻の48ページ目でお面を外した”ともだち”の顔を見たケンヂが、「おまえは...」と驚愕している場面の続き。前回との関連でいうと、ケンヂ最後のトランシーバーによる通信は、その10ページほど前に出てくる…

トランシーバー  (20世紀少年 第354回)

第12巻第12話の「ともだちの顔」の冒頭で、久しぶりにケンヂが登場する。血の大みそかの顛末は起承転結でいうと、時系列で「起」の部分が第5巻、「承」と「転」が第7巻から第8巻にかけて描かれていて、この第12話は「結」に当たる箇所である。その内容に入る…

なぜ悪い予感がしたのか  (20世紀少年 第353回)

「20世紀少年」は緻密に構成された物語だが、ときには辻褄が合わないなと感じるところがあり、その都度、強引に解釈したり問題を先送りにしたりしてきたのだが、今回もそういった悩ましい箇所の一つが出てくる。表題のとおりで、なぜヨシツネは「悪い予感」…

”血の大みそか”のスナップ・ショット  (20世紀少年 第352回)

ページ順でいうと、”ともだち”の正体にたどり着いたマルオに続いて、ヨシツネとユキジが真相に迫る。第12巻173ページ目、歴史の教科書を開いて、コイズミが怒っている。「このページ開いて、この写真、嘘くさいでーす、なんて言わなきゃ、今頃こんな目にあっ…

あさま山荘 (20世紀少年 第351回)

第10巻の第10話「銃声②」は、129ページ目にあるユキジの「クラスの男子の様子が変わった」という発言に続く場面だろう。ユキジはカンナに早く戻るよう電話しているのだが、途中で切られてしまった。ヨシツネは首吊り坂の事件の年号、現実の1970年とヴァーチ…

スーパーヒーローの思い出  (20世紀少年 第350回)

マルオがフクベエの生死を確認しようとしたのは、これが初めてではない。1回目は2000年12月31日の夜のことで、単行本でいえば第7巻の190ページに出てくる。「フクベエは...フクベエは...」とうろたえるマルオを、ケンヂは見ないほうが良いと制止した。マルオ…

606号室 (20世紀少年 第349回)

他の読者のみなさんは、どの段階で”ともだち”の正体が分かったのだろうか。私は見当さえつかず、というよりも考えるのももどかしく読み進めてきて、ようやく彼だったのかと思ったのは、第12巻の157ページ目であった。 マルオが見下ろしている郵便受けに「606…

赤ん坊の記憶  (20世紀少年 第348回)

第12巻の169ページ目、ユキジが電話で「カンナ、もういいから帰ってらっしゃい」と語りかけているが、その電波は141ページ目でカンナの携帯電話に届いている。ユキジの心配は二つあるようだ。一つは健康問題で、カンナがほとんど寝ていない様子であること。…

ひみつ集会のはじまり (20世紀少年 第347回)

第12巻第7話は「アルコールランプの下」というタイトルで、ショーグンと角田氏が夜の理科室に踏み込むと、窓から差し込む街灯りを背にして立つ男のシルエットが浮かんでいる。「誰だ」とオッチョは言った。 相手はそれに応えず、1971年の夏、理科室に入って…

万博組  (20世紀少年 第346回)

ヨシツネによると、大阪に親戚がいるなどの好条件を利用して、「夏休みの間中、ずっと大阪にいて万博三昧の奴ら」のことを、そうでない奴らは「万博組」と呼んでいたらしい。思えば今と違って、大半の日本人はそれほど収入・資産があったわけでもなく、交通…

理科室への怪談 (20世紀少年 第345回)

第12巻の第6話でユキジとヨシツネとコイズミは、首吊り坂の屋敷と、理科室の夜を話題にしている。いずれも”ともだち”がらみの大事件なのだが、この両者には共通点があって、ともに幽霊が登場する怪談なのだ。首吊り坂には神田ハルの幽霊が、理科室にはカツマ…

血の大みそかを知らない子供たち  (20世紀少年 第344回)

第12巻の第6話「理科室」、時は2015年の1月2日未明、羽田秘密基地の入口扉がそっと開いて、コイズミがこっそり外に出ようとしている。「行ってきま〜」と挨拶を欠かさないところが彼女らしく、また、あっさりヨシツネに見つかるところも彼女らしい。 しかも…

温泉湯けむり殺人事件  (20世紀少年 第343回)

当初この物語は放送室から始まって、これから図書室に向かい、間もなく理科室で一つのクライマックスを迎える。毎日毎日、一つの教室に朝から午後遅くまで閉じ込められる小中学生にとって、何々室に行くのはちょっとした学校生活上のアクセントになる。そう…

気になってしかたないのに  (20世紀少年 第342回)

そろそろ第12巻に戻ろう。74ページ目上段のオッチョ少年は、ビールスをまき散らすという案を山根に自慢されて、「ギョロ目のオッチョ」の眼を大きく見開いている。アイデア・マンは、自分だけではなかったのだ。ちょっとショックだったか。彼にしては珍しく…

「よげんの書」再読 【後半】 (20世紀少年 第341回)

第16巻に、露天商を営む万丈目の目前で、山根がフクベエに”絶交”を解いてもらうよう頼んでいる場面が出てくる。幸い、当時の”絶交”は普通の絶交だったようで、命を奪うような凶暴なものではなかったらしい。山根が絶交された理由は、どうやらフクベエの口ぶ…

「よげんの書」再読 【前半】 (20世紀少年 第340回)

第5巻第4話の「のろし」に、「よげんの書」を読むケンヂの姿が出てくる。警察による一斉摘発で地下鉄の廃駅を追い出されて、下水道沿いに引っ越したばかりのころで、2000年12月21日のことである。あと十日ほどで21世紀が来る。 どう戦ったらよいのかを考える…

山根君と落合君の会話 【後半】  (20世紀少年 第339回)

第12巻の71ページ目で、学研の科学の話題でオッチョに軽くあしらわれた山根は、「それともやっぱり、落合君もそれほどじゃないのかな」と絡んできた。科学の付録は本題を持ち出すための、話のとっかかりに過ぎなかったものと思われる。それにしても小学校時…

山根君と落合君の会話 【前半】  (20世紀少年 第338回)

第12巻の第4話「秘密の連絡」は、またしてもオッチョがその超人的な記憶力を発揮する一幕である。大福屋の戸倉から2003年当時の山根の住所を聴き出したショーグンと角田氏はその住所地を訪ねたが、人が住んでいる気配がない。家屋に蔦が絡んでいる。遠い昔、…

20世紀ラーメン少年  (20世紀少年 第337回)

第11巻の第3話「自爆」は、万博のテーマソングがヒット・チャート独走中の春波夫氏が、演歌歌手ならではの派手な衣装で、マネージャーのマルオを控の間に残して、”ともだち”に謁見する場面。興味深いことに”ともだち”は、首相や国民的歌手クラスに直接会うと…

西暦2015年のはじまり   (20世紀少年 第336回)

神様に嫌な年になるぞと宣告されてしまった2015年は、春波夫の豪邸で開催された新年会から始まる。元日、春さんは門下生やレコード会社(今でも、こういう言い方は残っているのだろうか)の皆さんを集めて歓待し、封筒を縦にしても立つほどのお年玉を配って…